スヌーズは逆効果?「あと5分」が脳に与える意外な影響とは

朝、けたたましく鳴り響く目覚まし時計。ついつい手が伸びてしまうのが「スヌーズボタン」だ。もう少しだけ、あと5分だけ…そんな誘惑に抗うのは難しい。しかし、科学者たちによれば、そのスヌーズボタンが、実は私たちの体が必要とする質の高い睡眠を妨げている可能性があるというのだ。
マサチューセッツ州にあるブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究者たちは、目覚まし時計のスヌーズ機能を押すことが、いかに一般的な習慣であるかを明らかにした。睡眠の専門家は推奨していないにもかかわらず、私たちの半数以上が平均してスヌーズを選んでいるという。そして、毎朝スヌーズの合間に平均11分もの時間を費やしてから、ようやく起き上がっているのだ。
しかし、このスヌーズは重要な睡眠段階を中断させ、日中の爽快感を損なう可能性があるというから穏やかではない。
なぜスヌーズはダメなのか? REM睡眠との関係
「もう少し眠りたいという望みを込めて、朝にスヌーズボタンを押す人は多いでしょう」と、研究の著者であるレベッカ・ロビンス博士は指摘する。しかし博士によれば、「この広く行われている現象は、睡眠研究ではほとんど注目されてきませんでした」とのことで、今回の研究がその実態に光を当てるものとなる。
ロビンス博士によると、最初に目が覚める直前の数時間は、レム睡眠が豊富に含まれている。このレム睡眠は、記憶の定着、認知機能、感情処理に重要な役割を果たすため、おそらく最も重要な睡眠段階と言えるだろう。「回復的な睡眠状態」とも称されるレム睡眠は、私たちの心身の健康に不可欠なのだ。
ところが、スヌーズボタンを押して再び眠りについた場合、その睡眠は通常、レム睡眠ではなく浅い睡眠にしかならない。つまり専門家によれば、スヌーズアラームでレム睡眠を中断させるくらいなら、最初のアラームを遅めに設定して、より多くのレム睡眠を確保した方が良いということになる。言い換えれば、どうせ遅くまで眠れるのなら、スヌーズアラームは完全にスキップしてしまった方が賢明だ、というわけだ。
「睡眠と翌日のパフォーマンスを最適化するための最善のアプローチは、アラームを可能な限り遅い時間に設定し、最初のアラームが鳴ったら起き上がると決意することです」とロビンス博士はアドバイスする。
世界規模の調査で明らかになったスヌーズ習慣の実態
ロビンス博士らの研究チームは、睡眠追跡スマートフォンアプリ「Sleep Cycle」のデータを用いて、世界中の2万1000人以上の睡眠データを分析した。この研究は6ヶ月間にわたるデータで、4大陸のユーザーによる300万回以上の睡眠セッションを対象としたものだ。
その結果、参加者が睡眠セッションを記録した夜のうち、半数以上(55.6%)がスヌーズアラームで終了していた。そして、ユーザーは毎朝、スヌーズの合間に平均11分を費やしてから起き上がっていた。
さらに衝撃的なのは、調査対象者の45%が、朝の80%以上でスヌーズボタンを押す「ヘビーユーザー」であり、彼らは1日に平均20分もスヌーズしていたことだ。
予想通り、スヌーズアラームの使用は、月曜日から金曜日までの典型的な勤務週間中に多く見られた。そして、土曜日と日曜日の朝は、人々が通常アラームなしの寝坊を楽しめるため、スヌーズの使用が最も少なかった。
また、研究チームは、睡眠時間が長い(9時間以上)場合の方が、9時間以下の場合よりもスヌーズアラームで終わる可能性が高いことも発見した。就寝時間が早い人はスヌーズアラームの使用が少なく、就寝時間が遅い人ほどスヌーズアラームを多用する傾向にあった。
国別に見ると、アメリカ、スウェーデン、ドイツの人々のスヌーズボタン使用率が最も高く、日本とオーストラリアの人々は最も低かった。

性別や季節による違いも
興味深いことに、研究者たちは男性と比較して女性のスヌーズアラーム使用が有意に多いことを観察した。「スヌーズアラーム行動に見られる性差は、男性と比較して女性の不眠症リスクが高いことに起因する可能性があります」と研究チームは報告している。
また、月ごとの差は最小限だったが、北半球では12月のスヌーズアラーム使用がわずかに多く、9月は少なかった(南半球ではその逆)。
この研究結果は学術誌「Scientific Reports」に掲載され、スヌーズアラームの使用に関する科学的文献に新たな証拠を加えるものとなった。「スヌーズアラームの使用が日中のパフォーマンスに与える影響を理解するためには、今後の研究が必要です」と研究チームは結論付けている。
どうやら、朝のあの数分間の甘い誘惑は、思った以上に私たちの睡眠の質に影響を与えているのかもしれない。
参考:Daily Mail Online、ほか
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2024.10.02 20:00心霊スヌーズは逆効果?「あと5分」が脳に与える意外な影響とはのページです。睡眠、レム睡眠、スヌーズなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで