極寒の大陸に、なぜ“若い女性の骨”が? 科学者を悩ませる、南極で発見された200年前の“ありえない遺物”

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

 南極で命を落とした探検家や隊員は少なくないが、南極で発見された最古の人間の遺体は19世紀初旬にさかのぼるという。発見された頭蓋骨と大腿骨などの骨の持ち主である女性はその時代になぜ、そしてどうやって南極にやって来たのだろうか――。

■南極で発見された最古の人骨の謎

 研究基地や長期の探検以外で、人類が南極に定住したことはない。かつての南極は温暖で熱帯雨林や沼地があり、恐竜の生息地であったことがわかっているが、人類がアフリカから旅立った頃には、すでに南極は極寒の地となっていた。

 人類が初めて南極大陸の存在を確認したのはいつなのか。

 マオリの伝説に登場するポリネシアの探検家ウイ・テ・ランギオラ(フイ・テ・ランギオラ)が、西暦7世紀にこの大陸に到達したという説があるようだ。ランギオラは南極は「太陽の届かない、霧がかかり、霞がかかった暗い場所」で、荒涼とした氷だらけの場所を目撃したと描写している。この記述から研究者たちは彼らが南極海を横断し、大陸を目撃した可能性を示唆している。

 次に南極大陸が目撃されたのは1820年になってからである。同年、ロシアの探検家タデウス・フォン・ベリングスハウゼンは、南極探検中に「極めて高い氷河」を目撃したと記している。

 その後数十年、数世紀にわたり、人類は南極大陸の探検をさらに進め、残念ながら命を落とすケースも起きている。

 しかし南極で発見された最古の人間の亡骸は、驚くべきことにベリングスハウゼンの南極発見前のものだった可能性もあるという。

「1985年1月7日16時35分、ケープ岬沿岸のヤマナビーチで海洋ゴミを収集している最中に、初めて人骨を発見した。ビーチの岩だらけの砂地に半分埋もれた頭蓋骨だった」とチリ大学の生物学・自然科学教授ダニエル・トーレス・ナバロ氏は論文でこの発見について説明している。

 頭頂後頭部のみが露出しており、前頭部、鼻上顎部、頭頂部は砂に埋もれていて、露出部の表面は微細藻類の繁殖により緑色に苔むしていた。回収作業の結果、保存状態の良い歯を含む上顎骨の破片2つを回収することができたが、周囲を徹底的な捜索してもこの時はそれ以上の人骨を見つけることはできなかった。

 初期調査の結果、頭蓋骨はおそらく若い女性のものであることが判明した。

 トーレス・ナバロ氏らはその後もこの遺跡とその周辺地域を何度も調査し、一帯で大腿骨を含む新たな骨を発見し、まだいくつかの人骨がヤマナビーチに「広く散在している」ことが示唆されることになった。

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Image by Peter Mcnally from Pixabay

 チームの分析によると、彼女はおそらくチリ出身で、1819年から1825年の間に亡くなったことが示された。しかしその時代に彼女はなぜ、どうやって南極にやってきたのか? もしかするとベリングスハウゼンよりも先に南極大陸を目撃していたのかもしれないのだ。

「これらの人骨の起源の可能性について考えると、この女性は、理由は不明だが、この場所に置き去りにされた19世紀のアザラシ猟師の集団の一員だった可能性があるという仮説を提唱したい」とトーレス・ナバロ氏は論考の中で説明している。

 もう一つの可能​​性は、何らかの理由でこの女性は船上で死亡し、当時の慣習通り海中に葬られたという説だ。海流や嵐によって遺体が南極の海岸に運ばれ、そこでナンキョクオオトウゾクカモメなどの腐肉食鳥類に食べられた可能性がある。複数の鳥に食べられて遺体はバラバラになり、人骨が周囲に散らばったと考えられるという。

 その昔のアザラシ猟師たちは記録にこそ残していないものの南極大陸の存在をベリングスハウゼンよりも先に知っていたのかもしれない。彼女のような亡骸がほかにも発見されれば事情解明の糸口にもなるが、この1体だけのままなら依然として不可解なミステリーなのだろう。

参考:「IFLScience」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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