「目の前の人の顔が“ドラゴン”に…」肌が紫に、鱗が生え、耳が尖る… 実在する恐怖の神経疾患「顔面変形視症」とは

目の前の相手の顔が恐ろしいドラゴンの頭に変貌を遂げていく――。謎のホラー的神経症状である「顔面変形視症」とは?
■人間の顔がドラゴンになる「顔面変形視症」とは?
目の前にいる人物の顔が変形して見えてくるという、きわめて稀な神経症状に「顔面変形視症(prosopometamorphopsia、PMO)」がある。
「顔面変形視症は、極めて稀にしか診断されない症状です」と、神経科学者のオースティン・リム博士は科学メディア「IFLScience」に語る。
「基本的には、他人の顔が徐々に別の顔のようなものに変化していくように見える症状です」(リム博士)
リム氏は新著『Horror On The Brain』の中で、この症状についてこの症例についてさらに詳しく説明している。
「必ずしもすぐに症状が現れるわけではありません。この症状を持つ人は、普通の顔を見ても、それが変形し、変容していくのを目の当たりにするかもしれません。特に不可解なのは、視力は正常であるにもかかわらず、顔全体、あるいは一部の認識に影響を及ぼす可能性があるという点です」(リム博士)
2020年の症例研究では、ADというニックネームを持つ患者の体験が詳細に記述されている。彼は医師の診察を受け、見る人すべての顔の片側が溶けて見えると訴えている。
この奇妙な病気をより深く理解するため、研究者たちはADに異なる背景、異なる角度、異なる視点から撮影された顔やその他の物体の一連の画像を見せた。その結果、彼は無生物を正しく見ることができていたが、人の顔についてはどの角度から見ても、ほとんどの場合歪んで見えていることが確認された。
このタイプのPMOは、片側顔面変形視症、またはヘミPMOとして知られている。ADの症例研究が発表された時点では、この病態は医学史上わずか25件しか記録されていなかった。ヘミPMOは通常、何らかの脳損傷によって引き起こされているが、ADの場合、ヘミPMOは視覚に関連する脳の延髄領域の病変に関連していた。
この症状はAIの顔認識技術に匹敵すると言われている。顔認識技術は、顔画像のライブラリを用いて、初めて見る顔の空白を埋める技術であり、我々の脳も初めて見る顔について、過去に見た顔のあらゆる例を統合し、心の中にイメージを形成すると考えられている。ADの脳ではこのプロセスを担う脳の領域に欠陥があり、その結果、彼の見る顔はムンクやサルバドール・ダリの絵画の人物のようになると考えられる。
PMOは「悪魔顔症候群」とも呼ばれており、2024年に発表された論文は、この症状を持つ者が顔をどのように見ているかを初めて視覚化したもので、その結果はかなり不気味だ。

発表時点ではPMOの症例が約75件報告されており、未だ解明されていない点も多いものの、この悪魔的な顔の歪みは一部の患者に共通する症状のようである。
PMO患者が目撃したさまざまな顔は、悪魔の顔だけではない。リム博士が『Horror On The Brain』で例に挙げているのは、糊でくっつけたような顔、魔女の顔、溶けたゾンビの顔、さらには普通の人の顔がドラゴンの顔に変化するのを見たという女性も報告されている。
「ある女性が誰かの顔をじっと見つめていると、その顔がドラゴンの顔に変化するのを見たという症例が説明されています。まるで肌の色が変わるかのように。多くの場合、紫色の色合いに変化します。また、皮膚に鱗が生え始め、耳が少し尖ります」(リム博士)
きわめて稀な症状であるPMOは我々の脳の情報処理が少し狂うことで信じられない現象が起き得ることを物語るケースであり、症例を持つ人々が普段どのような日常を送っているのか興味深くもある。
参考:「IFLScience」ほか
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