大洪水神話は“最古のフェイクニュース”!?神の嘘で人類が滅亡へと導かれた可能性…

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 旧約聖書『創世記』に登場する大洪水の物語「ノアの方舟」の“元ネタ”を検証すると、ストーリーが美化され過ぎているのではないかという疑惑が持ち上がっているようだ。古代の水の神は、実はきわめて腹黒い存在であったというのだ。

■大洪水神話はフェイクニュースだった!?

「ノアの方舟」の“元ネタ”の1つは紀元前1300~紀元前1200年頃の古代メソポタミアの文学作品である粘土板に記された『ギルガメシュ叙事詩』である。

『ギルガメシュ叙事詩』の洪水神話によると、バビロニアの水の神エア(Ea)が洪水を起こし、ウトナピシュティムとその家族を除く全人類を滅ぼしたとされている。神の嘘で人類が滅亡へと導かれた可能性たちは動物たちでいっぱいの方舟に無事に乗り込んで助かり、ほかの者は無残にも全員溺死したのだ。

 このバビロニアの物語は、『ギルガメシュ叙事詩』を構成する3000年前の粘土板に刻まれており、聖書の『創世記』に影響を与えたと考えられている。

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ギルガメシュ叙事詩の第11版粘土板(洪水粘土板)。大英博物館 By Osama Shukir Muhammed Amin FRCP(Glasg)Own work, CC BY-SA 4.0, Link

 科学メディア「IFLScience」によると、英ケンブリッジ大学のマーティン・ワージントン博士は、著書『Duplicity in the Gilgamesh Flood(ギルガメシュの洪水における二重性)』の中で、聖書の物語とバビロニアの物語は、方舟への積み込み作業の意味が異なると主張している。

 ワージントン氏は、古代の粘土板に記された9行の物語を再分析し、バビロニアの人々はエア神に騙されて方舟を建造したのだと主張している。

「エアはフェイクニュースを広めて人類を騙します。彼はウトナピシュティムとして知られるバビロニアのノアに、もし方舟の建造に協力すれば空から食料が降ると約束して命じました」とワージントン氏は説明する。

「エアのメッセージは食糧の雨を約束しているように見えますが、その隠された意味は大洪水の警告です。方舟が完成すると、ウトナピシュティムとその家族は方舟に乗り込み、動物たちと共に生き延びます。他の者は皆溺死します。神話の時代を舞台にしたこの初期のエピソードから、情報と言語の操作が始まりました。これはフェイクニュースの最も古い例かもしれません」(ワージントン氏)

 ワージントン氏の翻訳によれば、肯定的な解釈では人々に「夜明けにはケーキが、夕方には小麦の雨が降るだろう」というメッセージが告げられている。一方、同じ文には否定的な解釈もいくつかあり、ワージントン氏は次のようにも解釈できると示唆している。

「彼は呪文と風の悪魔によって、麦粒のように濃い雨を汝らに降らせるであろう。(そして)夜明けには暗闇を汝らに降らせ、そして夜明け前の薄明かりの中で、麦粒のように濃い雨を汝らに降らせるであろう」

“麦粒のように濃い雨”は比喩であり食べ物ではなかったというのだ。それどころが大洪水の原因にもなる土砂降りの雨のことであったのだ。

 物語の中では人々はウトナピシュティムの方舟に動物を積み込む作業を手伝ったが、その苦労の甲斐なくその後は溺死してしまう。

「エアは明らかに、複数の意味を同時に一つの二枚舌の発言に圧縮することができる言葉の達人です」(ワージントン氏)

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 要するに『ギルガメシュ叙事詩』の洪水神話は、一家族を除く全人類が騙されて死ぬことになるという身も蓋もない話であるというのだ。

「バビロニアの神々は、人々に食料を与えられて生き延びているのです。もし人類が滅亡していたら、神々は飢えていたでしょう。エア神は言語を操り、人々を惑わして自分の意志に従わせます。それが自分の利益になるからです。現代にも同様の現象は数多く存在します!」(ワージントン氏)

 神々の決議では洪水で人類を全滅させる手筈であったが、それでは供物が得られないエア神はウトナピシュティムの家族だけは救うことにしたのである。

 洪水物語は実は神が人々を騙すストーリーだったとすれば、聖書の「ノアの方舟」は美化され過ぎているのかもしれない。知らなかったほうが良かったと思う人も少なくなさそうだ。

参考:「IFLScience」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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