ネットを汚染する「AIスロップ」とは?― “情報の洪水”から身を守る方法

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The Guardian (2024-05-19), Wikimedia Commons

 SNSのタイムラインで、写真のようで、どこかCGっぽさも感じる奇妙な画像を見たことはないだろうか。「エビの姿をしたキリスト」のような奇抜なものから、洪水の中で子犬を抱く少女のように、一見すると本物と見間違えそうなものまで様々だ。

 これらはすべて「AIスロップ」と呼ばれるコンテンツの一例である。「スロップ(slop)」とは、元々「汚水」や「残飯」を意味する言葉。AI技術を使って大量生産された、低品質で不正確なコンテンツが、まるで汚水のようにインターネットを汚染している現状を的確に表している。

 安価で、誰でも簡単に作れるAIスロップは、今や私たちの情報環境を脅かす深刻な問題となっている。

あらゆる場所に溢れ出す「AIの残飯」

 AIスロップは、もはやインターネットの至る所に存在している。

 2025年7月、英ガーディアン紙の分析によれば、YouTubeで急成長しているチャンネルの上位100のうち9つが、「ゾンビがサッカーをする」「猫が昼ドラを演じる」といった、AIが生成した奇妙なコンテンツで占められていたという。

 音楽ストリーミングサービスSpotifyに突如現れた新人バンドも、実はAIが生み出した架空の存在かもしれない。AIスロップの制作者たちは、再生数や視聴時間に応じて収益が得られるプラットフォームの仕組みを利用し、人々の注目を引くためだけに、ギリギリ見れるレベルのコンテンツを大量に投下しているのだ。

 この問題はエンターテイメントの世界だけにとどまらない。SF雑誌『クラークスワールド』は、AIが書いた質の低い投稿が殺到したため、2024年に一般からの作品受付を一時停止する事態に追い込まれた。さらには、世界中の人々が頼りにする情報源であるWikipediaでさえ、AIが生成した低品質な記事の削除に追われ、コミュニティによる管理システムが悲鳴を上げている。

AIスロップがもたらす深刻な被害

 AIスロップの最も危険な点は、それが単なる「質の低いコンテンツ」では終わらないことだ。

 2024年にハリケーン・ヘレンが襲来した際には、AIが生成した「洪水の中で子犬を抱きしめる少女」の画像が、バイデン政権の災害対応を批判する材料として悪用された。たとえAIが作ったと分かる画像であっても、一瞬見ただけの人々を騙し、誤った情報を拡散させる強力なツールとなり得るのだ。

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画像は「Live Science」より

 さらに、AIスロップは本物のクリエイターたちの生活をも脅かしている。AIが作ったコンテンツがSNSのアルゴリズムによって拡散されることで、これまでオンラインコンテンツで生計を立ててきたアーティストや作家たちの作品が埋もれ、彼らの職や収入が奪われつつある。

 ディープフェイクや偽アカウントへの警戒に加え、私たちは今、AIが生み出す「情報の残飯」の山にも向き合わなければならない時代にいる。幸い、この問題には「AIスロップ」という、キャッチーで覚えやすい名前がついた。まずは、この言葉を知ることから始めるのが、汚染された情報環境を生き抜く第一歩なのかもしれない。

参考:Live Science、ほか

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