“白い虹”が出たら地震が来る?実用的地震予知の大本命は「日暈」と「ラドン濃度」か

※当記事は2016年の記事を再編集して掲載しています。

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 2016年9月26日午後、北海道南部・浦河沖でM5.5の地震が発生し、函館市で最大震度4を記録した。その2日前の24日朝、北海道亀田郡七飯町で、白い虹が撮影された。「白虹」(しろにじ、はっこう)もしくは「霧虹」などと呼び、空に虹のような弧を描くが、その色は七色ではなく、白いものだ。これを伝えたウェザーニューズでは、『激レア!北海道で「白い虹」現る』と見出しがつくほどの珍しい現象だ。どうやらこの白虹が現れると、数日後に地震が起きることが多いとして、多方面で注目を集めているようだ。また、地震予知研究では大気中の「ラドン濃度」も重視されており、これも併せて紹介したい。

■白い虹→地震発生のケースがこんなに!

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白虹 画像は、「ウェザーニューズ」より引用

 白虹と地震との関係を示す前例を、以下にいくつか紹介したい。まず、2016年5月29日にも、同じ北海道の七飯町で白虹が撮影されていた。この時にも、2日後の5月31日に千島列島北西沖(シムシル島東北沖)でM6.1の大きな地震が発生した。また、6日後の6月4日には、より近い十勝沖でM4.4の地震も起きていた。同年6月17日には、神奈川県で白虹が撮影されたが、3日後となる6月20日には千葉県北西部でM4.6の地震が起きた。

 2015年4月27日朝には、山梨県富士吉田市でアマチュア写真家によって白虹が撮影されたが、2日後の29日に山梨県中・西部でM2.1、6日後の5月3日には群馬県南部でM4.5の地震が起きている。

 それだけではない。白虹は海外でも出現している。2016年8月22日には、米ミズーリ州ニューヘブンで、写真家がドライブ中に白虹を撮影した。実は、ミズーリ州とニュージャージー州の県境付近では現在に至るまで群発地震が起きており、この5日後の27日にはM2.5、18日後の9月9日にはM3.4の地震が起きていた。

■「日暈」の後にも地震が起きる

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日暈 画像は、「Wikipedia」より引用

 ところで、この白虹とよく似た「暈」(かさ)と呼ばれる気象現象がある。これは、太陽や月のまわりに薄い雲がかかって周囲に光の輪が現れる大気光学現象だ。太陽のまわりに現れた場合は「日暈」(ひがさ、にちうん、ハロ)とも呼ばれ、虹のように弧を描く場合に「白虹」とも呼ばれる。つまり、白虹は日暈と同じ現象なのだ。では、日暈が現れた時には、それが地震の前兆現象となる場合があるのだろうか。

 筆者がこれまでに収集してきたデータを解析する限りでは、やはりその可能性はあるようだ。いくつか、日暈が観測された数日後に地震が起きた例を挙げてみよう。2010年10月21日に、インドネシア西スマトラ州パダンで日暈が見られたが、5日後の10月26日にスマトラ島沖でM7.7の大地震が発生した。2014年5月5日には、中国チベット自治区ラサ市で鮮やかな日暈が現れ、大きな話題となったが、その日の夕方にタイ・チェンライ県でM6.0の地震が発生した。

 日本における最近の例としては、2016年7月12日に岩手県滝沢市で日暈が観測されたが、4日後の7月16日に、秋田県内陸北部でM4.5、最大震度3の地震が起きた。このように、日本でも海外でも、日暈や白虹が現れた数日後に、周辺地域で地震が起きることが多いようだ。

■大気中のラドン濃度にも注目

 さて、白虹や日暈が地震の前兆現象である可能性についてはおわかりいただけただろう。しかし近年、最先端の研究において、より正確な地震予測につながる方法として期待されているのが、「大気中のラドン濃度」だ。地中から出るラドンガスが、地震の前には増大するということが判明しつつある。

 このことが初めて認識されたのは、今から半世紀以上前となる1966年のことだ。4月26日にウズベク共和国(当時はソビエト連邦)の首都で起きたタシュケント地震(M5.0)では、同市の炭酸泉水に含まれるラドン濃度の値が地震前に急増し、地震の後に元に戻っていたのだ。このことが世界中で大きな話題となり、地下水の化学的研究が盛んになった。その後、日本でも精密なラドン測定器が開発され、現在に至るまで地震との関連性が研究され続けてきた経緯がある。

 ラドンとは、天然に唯一存在する希ガスであり、ウランが存在すると常に発生しているが、通常は外部に出ることなく岩石内にとどまっている。だが、岩石に亀裂が入ることによって流出し、地下水とともに地表近くまで上昇すると考えられている。このため、地震前に地下で起きている岩石破壊こそが、地下水や大気中のラドン濃度上昇に関係している可能性が囁かれているのだ。

■ラドン濃度に異変→地震発生のケースもこんなに!

 本記事でラドン濃度を紹介するのは、前述した浦河沖地震(M5.5)の時、実際に大気中ラドン濃度に上昇が見られたからだ。『RadGraph – 大気中ラドン濃度グラフ集(現在閉鎖)』というWebサイトでは、札幌・市川・広島などで観測されたラドン濃度のグラフをリアルタイムで表示することができる。筆者が主宰するサイト『地震前兆ラボ』の「リアルタイム地震前兆データ」のページでも、いくつかの観測点のグラフを掲載させていただいているが、浦河沖の地震の数日前から、札幌のデータが上昇しているのに注目していたところ、まさに地震が発生したのだ。下記がそのグラフで、浦河沖で地震が発生したのは、上昇していた値が下降に転じた直後だったことがわかるだろう。

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 ほかにも、ラドン濃度の測定データで、地震との関連を示す顕著な例をいくつか挙げてみよう。まず、神戸薬科大学が連続測定していたラドン濃度では、1995年の阪神・淡路大震災の直前にだけ明確に増大し、地震後に元の値に戻っていたという。そして、1978年1月14日の伊豆大島近海地震(M7.0)の前にも、ラドン濃度の計測で異常な値が測定されていた。しかしこの時は、通常ならば増大するはずのラドン濃度が減少したという。

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 筆者が観測した例としては、前述の「大気中ラドン濃度」サイトで、市川観測点のグラフが2016年6月下旬に上昇、ピークを過ぎたあとで下降へと転じ、その後に元の値に戻った(収束した)頃の6月30日、東京都23区でM3.4、最大震度3の地震が起きている。千葉県市川市は震源からおよそ30kmほどの近さなので、M3程度の小規模でも顕著な値が出たと思われる。筆者の経験でいうと、今回紹介した2件のラドン濃度グラフに見られるように、グラフの値が上昇してピークを過ぎ、下降中あるいは下降が終わった(収束した)直後に地震発生となることが多いようだ。

 こうして見てきたように、白虹・日暈といった大気の光学現象を観測したり、ラドン濃度の値に注意を向けることによって、いまだメカニズムは判明せずとも自分なりの「地震予知」ができ、それが個人レベルの防災につながるのではないだろうか。ネット上では、地震の前に異臭がしたというような情報を目にすることもあるが、これなども大気に混じったラドンガスによる影響だったのかもしれない。今後のさらなる研究の進展に期待したいところだ。

参考:「Earthquake Track」、「CRI」、ほか

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文=百瀬直也

超常現象研究家、地震前兆研究家、ライター。25年のソフトウエア開発歴を生かしIT技術やデータ重視の調査研究が得意。
Webサイト:百幸.com
ブログ:『探求三昧』
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Twitter: @noya_momose

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