“神の力”は実在したのか? 死者蘇生、動物との対話、人の心を動かす術を記した古代エジプトの謎の書物『トートの書』

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 古代エジプト人の知識のすべてが書かれているという『トートの書』とは――。一読するとこの世の秘密が解読でき、大地、海、空、そして天体を支配する術を獲得できるという。

■古代神の知識の粋『トートの書』とは?

 人類の歴史上最も神秘的な書物の1つが『トートの書(Book of Thoth)』である。これは古代神、トートによって書かれたといわれている古代エジプトの神聖で神秘的な書物である。

『トートの書』はさまざまなパピルスに断片的に残されており、その大部分はプトレマイオス朝時代の2世紀頃のものである。その内容にはさまざまなバージョンがあるが、魔術、儀式、占星術、地理学、医学、天文学など多岐にわたっている。またミステリアスな呪文も含まれている。

 初期キリスト教を代表する神学者、アレクサンドリアのクレメンス(150-215)は、著書『ストロマタ』の第6巻で、古代エジプトの司祭が使用した42冊の本について言及しており、そこには「エジプト人の哲学のすべて」が含まれていると述べ、これらすべての書物はトート神によって書かれたものであると説明している。

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『トートの書』の基本的な構成は、トート神と「知りたいと願う」弟子との対話集であるが、弟子と話す別の神、おそらくオシリスも登場する。

 古代エジプトの司祭マネトは、トートが3万6525冊の本を書いたと主張したが、セレウコスなど一部の研究者は、その数は約2万冊だったと主張している。

 フィクションの物語としての『トートの書』は、プトレマイオス朝時代に創作された古代エジプトの物語の1つである。この物語では、勇敢な古代エジプトの王子ネフェルカプタハが、ナイル川の奥深くに隠されたトートの書を取り戻そうと決意する話が綴られている。

 物語によれば、『トートの書』はもともとコプトス近くのナイル川の底に隠されており、誰も殺すことのできない蛇によって守られた入れ子構造の箱の中に閉じ込められていたという。

 勇敢な古代エジプトの王子ネフェルカプタハは『トートの書』を手に入れようと現地に赴いて蛇と戦って倒し、見事に入手に成功したのだが、トート神から盗んだ罰として妻のアウェレと息子のメリブが殺害された。

 ネフェルカプタハは最終的に自殺し、『トートの書』と共に埋葬されたと言われている。

 それから何世代も経った後、物語の主人公であるセトネ・カムワス(歴史上の王子カエムワセトをモデルにした人物)は、ネフェルカプタハの幽霊の激しい制止にもかかわらず、ネフェルカプタハの墓から『トートの書』を盗み出すことに成功する。

 その後、セトネは美しい女性と出逢うが、その女性から我が子を殺害するように説得されて殺すと、王(ファラオ)に叱責されて恥辱を受けることになる。

 しかしこの一件は亡霊・ネフェルカプタハが作り出した幻覚であったことが判明する。

 この幻覚に恐怖したセトネは『トートの書』をネフェルカプタハの墓に返し、ネフェルカプタハの妻と息子の遺体を運び込んで一緒に埋葬して弔ったのだった。

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 このストーリーは、神々の知識は人間が持つべきではないというエジプト信仰のメッセージが語られているとされている。

『トートの書』を読んだ者は、地球、海、空、天体に関する秘密を解読し、習得する手段を得ることができ、動物の言葉を理解し、死者に命を吹き込み、遠くの人や近くの人の心を動かす能力も獲得できると信じられていたという。

 一部の研究者によってAIによる解読も進められているという『トートの書』に綴られた古代の智慧の全容が解き明かされた時、近現代において西欧近代的知性のみを発展させてきた我々には“学び直し”が求められてくるのかもしれない。

参考:「Ancient Code」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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