2万5000人が参加した“国営ラジオ・テレパシー実験”! 被験者を一晩監禁、国民に“思考”を送った狂気の計画

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 ラジオの電波でテレパシーが可能なのか? この命題を検証するために2万5000人が参加した実験が1927年に行われていた――。

■ラジオ生放送で行われたテレパシー実験

 初期の無線電信の検波器に用いられたコヒーラの発明者であるイギリスの物理学者、オリバー・ロッジ卿(1851-1940)は科学者である一方、チャールズ・ダーウィンやサー・アーサー・コナン・ドイル卿も所属していた「心霊現象研究協会」のメンバーで、心霊現象を肯定する立場での活動や著述を行っており、降霊会などにも参加していた。

 当時、トーマス・エジソンも研究していた電子音声現象(Electronic voice phenomenon、EVP)は、無線の長波と短波の間に、霊界とのテレパシー通信のようなものを可能にする周波数があり得ると一部で信じられており、ロッジ卿もその支持者であった。

オリバー・ロッジ Lafayette Ltd. – [1], CC 表示 4.0, リンクによる

 ラジオの電波でテレパシー現象が実証できるのではないかと考えたロッジ卿は1927年、は「心霊現象研究協会」と6人の協力者と共に、イギリス国民を対象としたラジオ実験でテレパシー現象の検証を試みた。

 実験の仕組みは非常にシンプルで、部屋に6人の被験者を閉じ込め、それぞれに異なる特定の時間にいくつかのアイテムを見せ、参加者は見たアイテムを強く念じて“テレパシー”を送ることが求められた。

 ロッジ卿は国営ラジオに生出演し、被験者がそのアイテムを今見ているとリスナーに伝え、リスナーはそのアイテムが何であるかを推測して言葉にした手紙を送るよう促された。

 実験に使用された物体は、トランプのカード2枚 (クラブの2とハートの9)、2羽のカラスの間に置かれた人間の頭蓋骨のビジュアル、香りのよいライラックのスプレー、そして閉じ込められたボランティアたちの退屈を紛らわせるためにグロテスクなマスクと山高帽をかぶった人物であった。

 研究チームは、参加者に提示されたアイテムに思考を集中させる前に、彼らを部屋に閉じ込めることで干渉の可能性を低減しようとした。共謀の可能性をなくすため、6人のボランティアは翌朝まで一晩中閉じ込められることに同意した。

 ラジオ番組のリスナーに対しては、放送を通じて思考を聞き取ることが求められ、その推測を「心霊研究協会」に手紙で送るよう依頼された。実験が成功した場合、さらなる追跡調査が行われる予定であった。

 ロッジ卿は実験で肯定的な結果が得られる可能性は低いと考えており、その点では正しかった。研究チームは2万5000通以上の手紙を受け取ったが、テレパシー現象が起きた痕跡は見つからなかった。

 頭蓋骨の物体を推測できたのはわずか5通だった。一方、トランプのカードを使った実験では人々がエース、特にスペードのエースを選ぶ傾向があり、奇数は偶数よりも優先されるバイアスが明らかになった。

「心霊現象研究協会」の研究員であり、この実験の協力者でもあるVJ・ウーリー氏は、実験全体としては超常現象の痕跡は見つからなかったものの、いくつか奇妙な点があったと述べている。特に、頭蓋骨とカラスの画像に対して5人が頭蓋骨、1人が人間の頭を推測し、さらに3人がライラックの画像に対して花を推測した。

 興味深いことに山高帽とマスクを着用した人物(実はウーリー氏)については、146人が人がそこにいると推測し、236人が誰かが正装していると推測し、499人が楽しさの感情を示唆し、73人がマスクまたは顔が関係していると推測し、202人が帽子を示唆した。とはいえこの程度ではテレパシー現象が起きた証拠にはまったくならない。

「参加者のうち数名には超常的な能力の兆候が見られるようだが、彼らの成功は、他の大勢の人々の失敗によってかき消されてしまいました」とウーリー氏は語っている。

 最後のアイテムが人物だと推測した人が多かったのは、ラジオの生放送中に参加者の笑い声が流れてしまったことなどから推測しやすくなった可能性が示唆されている。

 エジソンにも成し遂げられなかった霊界通信だが、ロッジ卿もまたテレパシー現象を証明できずにこの世を去った。今頃は霊界の側からこちらの世界との通信を試みているのだろうか。

参考:「IFLScience」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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