46年ぶりに蘇った「ゾンビ衛星」― 宇宙の墓場から届いた不気味な4秒周期の信号

1967年、一機の人工衛星がその役目を終え、宇宙の沈黙の中に消えた。地球の周回軌道に乗ったまま、ただの宇宙ゴミ(スペースデブリ)として漂い続けるはずだったその衛星が、半世紀近い時を経て、突如として“死”から蘇ったのだ。2013年、英国のアマチュア無線家が受信したのは、46年間沈黙していたはずの衛星からの、あまりに不気味な信号だった。
打ち上げ失敗から始まった、衛星「LES-1」の数奇な運命
その“ゾンビ衛星”の名は、「LES-1(リンカーン実験衛星1号)」。1965年、米空軍とマサチューセッツ工科大学(MIT)リンカーン研究所が、軍事衛星通信の実用化を目指して打ち上げた、当時最先端の実験衛星だった。
しかし、その運命は最初から多難だった。打ち上げ時の配線ミスにより、LES-1は予定されていた軌道に乗ることができず、その目的のほとんどを達成できないまま、わずか2年後の1967年に通信を途絶。技術者たちの期待を一身に背負ったはずの衛星は、宇宙の墓場で静かに眠りについた…かに思われた。

46年ぶりの“覚醒”―アマチュア無線家が捉えた「幽霊の音」
そして2013年。英国コーンウォールに住むアマチュア無線家、フィル・ウィリアムズ氏が、宇宙から届く奇妙な信号を捉えた。その信号は、4秒ごとに強まったり弱まったりを繰り返す、独特のリズムを持っていた。ウィリアムズ氏がその信号の発信源を突き止めると、驚くべき事実が判明する。それは、46年前に“死亡”したはずの衛星、LES-1からのものだったのだ。
「ソーラーパネルからの電圧が変動することで、信号に独特の“幽霊のような音”が生まれている」。ウィリアムズ氏はそう分析した。4秒という周期は、LES-1が宇宙空間で回転しながら、太陽光パネルが4秒ごとに太陽の光を受けたり遮られたりしていることを示唆していた。
“ゾンビ化”の原因は?―宇宙で起きた奇跡のショート
なぜ、半世紀近くも沈黙していた衛星が、突如として信号を送り始めたのか。その正確な原因は、今も完全には解明されていない。
しかし、リンカーン研究所の科学者たちは、最も有力な仮説として「電気的なショート」を挙げている。長い年月をかけて劣化したバッテリーや回路がショートを起こし、その結果、ソーラーパネルで発電された電力が、直接送信機に流れ込むようになったのではないか、というのだ。つまり、意図せずして、衛星の心臓部が“再起動”してしまったのである。
この奇跡的な“覚醒”を受け、リンカーン研究所はLES-1がキャンパス上空を通過するたびに、その信号を記録するシステムを設置した。「これほど長い年月を経て、今も信号を送り続けているのを見るのは驚くべきことだ」と、研究所のリーダーは語る。
打ち上げ失敗という不運なスタートを切ったLES-1。しかし、その失敗があったからこそは宇宙の片隅で静かに生き長らえ、半世紀の時を超えて、再び我々の前にその姿を現したのかもしれない。今も地球の周回軌道を回り、不気味な信号を送り続ける“ゾンビ衛星”は、宇宙開発の歴史が残した、奇妙で、そしてどこかロマンチックな遺産なのである。
参考:IFLScience、ほか
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2024.10.02 20:00心霊46年ぶりに蘇った「ゾンビ衛星」― 宇宙の墓場から届いた不気味な4秒周期の信号のページです。人工衛星などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで