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「ブラッディ・メアリー」は本当に“視える”、鏡を見つめると“怪物”が現れる… 脳が作り出す戦慄の降霊術

2025.10.27 22:30 編集部

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「ブラッディ・メアリー」は本当に“視える”、鏡を見つめると“怪物”が現れる… 脳が作り出す戦慄の降霊術の画像1 — イメージ画像　Created with AI image generation

「ブラッディ・メアリー、ブラッディ・メアリー、ブラッディ・メアリー…」

　暗闇の中、ろうそくの灯りを頼りに鏡を見つめ、その名を3回唱えると、血まみれの女の幽霊が現れる――。これは、世界中で語り継がれてきた、古典的な降霊術の遊びだ。しかし、もしこの子供騙しのようなゲームが、本当に“幽霊”を召喚する力を持っていたとしたら…？最新の心理学の研究が、この遊びの背後に隠された、驚くべき脳のメカニズムを解き明かした。

　なお、日本でも同様に、「こっくりさん」や「エンジェルさま」といった、呼びかけによって“何か”を降ろす遊びが長く親しまれており、文化が違っても人間の「見えない存在を招く儀式」への興味は共通していることがわかる。

10分間鏡を見つめると、半数が「怪物を見た」

　この奇妙な現象に科学的なメスを入れたのが、イタリア・ウルビーノ大学の心理学者、ジョバンニ・カプート博士だ。彼は、50人の被験者に、薄暗い静かな部屋で10分間、鏡に映る自分自身の顔を見つめ続けてもらうという、シンプルな実験を行った。

　その結果は衝撃的なものだった。66%の被験者が「自分の顔が大きく変形した」と報告。さらに、48%、つまり、ほぼ半数の人々が、「空想上の怪物のようなものを見た」と証言したのだ。中には、「亡くなった親の顔が見えた」と語る者もいた。

　カプート博士は、この「鏡の中の奇妙な顔の錯覚」こそが、人々がブラッディ・メアリーのゲームで、本当に幽霊を見てしまう原因だと結論づけた。

「ブラッディ・メアリー」は本当に“視える”、鏡を見つめると“怪物”が現れる… 脳が作り出す戦慄の降霊術の画像2 — 被験者が見た鏡に映った顔の一部　画像は「Daily Mail Online」より

なぜ自分の顔が“怪物”に変わるのか？―脳が生み出す3段階の錯覚

　では、なぜ私たちの脳は、鏡の中の自分を、見知らぬ誰かや、恐ろしい怪物として誤認識してしまうのだろうか。カプート博士は、そのプロセスを3つの段階で説明する。

第1段階：変形（Deformation）
　人間の脳は、変化しない刺激に対しては、次第に反応しなくなる性質を持つ（トロクスラー効果）。鏡の中の自分の顔をじっと見つめ続けると、脳は動かない部分の情報を「重要でない」と判断し、無視し始める。その結果、顔のパーツが歪んだり消えたりするように見えるのだ。

第2段階：分離（Detachment）
　顔が変形し始めると、脳の顔認識を司る領域は、断片的な情報をなんとか一つの「顔」として再構築しようと躍起になる。この過程で、鏡の中の像が「自分ではない別の誰か」であるかのような感覚、「分離」が生まれる。これは幽体離脱の体験にも似ているという。

第3段階：非人格化（Depersonalization）
　そして最終段階。脳は、再構築した“未知の顔”に新たなアイデンティティを投影し始める。それが、「ブラッディ・メアリー」という名の、鏡の向こう側の“誰か”として認識されるのだ。

「ブラッディ・メアリー」は本当に“視える”、鏡を見つめると“怪物”が現れる… 脳が作り出す戦慄の降霊術の画像3 — イメージ画像　Created with AI image generation

文化と期待が生み出す“最強のプラセボ効果”

　しかし、この脳科学的な説明だけでは、なぜ多くの人が「怪物」や「悪魔」といった、共通して恐ろしいイメージを見るのか、という疑問は残る。

　ロンドン大学キングス・カレッジのデビッド・ターヒューン博士は、その原因を「文化的背景と期待」にあると指摘する。鏡は古くから占いや降霊術の道具として使われてきた。ホラー映画でも鏡は恐怖の象徴として頻繁に登場する。

「暗い部屋」「ろうそくの灯り」「ブラッディ・メアリーと唱える儀式」。これらの不気味な環境と、我々が文化的に刷り込まれてきた「鏡＝怖いもの」という先入観が組み合わさることで、脳は“期待”通りの、恐ろしい幻覚を自ら作り出してしまうのだ。これは、極めて強力な「プラセボ効果」の一種だと言える。

　つまり、「ブラッディ・メアリー」は、脳が生み出す幻影であると同時に、それが“何か”の入り口となる可能性も否定できない。暗闇の鏡に映るものがただの錯覚か、それとも異界からの訪問者なのかは誰にも断言できないだろう。日本でも「こっくりさん」のように、呼びかけや恐怖の儀式が思わぬ現象を引き起こすことがある。

　鏡を前にして名を唱える行為は、文化を越えて“境界”を揺さぶる儀式なのだ。もしあなたがこのハロウィーンに試すなら覚悟しておいた方がいい。鏡の向こう側であなたを見つめているのは、あなた自身の脳が生み出した幻影か、それとも――本当に呼び寄せてしまった“何か”なのかもしれない。

参考：Daily Mail Online、ほか