世界で進行する「昆虫黙示録」の戦慄… 個体数の急減が招く世界的な食糧危機の悪夢とは

世界的に昆虫の個体数が急減しているという。土壌を豊かにし、植物の受粉を担う昆虫の減少は今後の農作物の収穫量に深刻な悪影響を及ぼすとして懸念を深めている。
■昆虫の急減が食糧危機を招く
今年の夏に何度蚊に刺されただろうか。あるいは車のフロントガラスに虫の死骸が何匹付着しただろうか。今、世界中で昆虫の数が急減しているという。
過去30年間で、昆虫の個体数は一部の地域で最大75%も減少しているといわれており、「昆虫黙示録(Insect Apocalypse)」と呼ばれる現象となっている。これは単なる生態学的な異常ではなく、農業の基盤への直接的な脅威であり、作物の収穫量から家畜の飼料に至るまで、あらゆるものに波及効果をもたらす可能性がある。
「ScienceDirect」誌に掲載された包括的なレビューによると、昆虫はリンゴ、アーモンド、コーヒーといった主要作物を含む世界の主要食用作物の75%の受粉に重要な役割を果たしている。昆虫がいなければ、収穫量は急激に減少し、気候変動と人口増加に既に直面している世界において、食糧不足がさらに深刻化する可能性がある。
危機は作物の受粉だけにとどまらない。昆虫は多くの食物連鎖の基盤を形成し、人間がタンパク質源として頼りにしている鳥類、魚類、哺乳類を支えている。

昆虫の減少の原因は多面的であり、「Mongabay」に掲載された2019年の研究では、ドイツの飛翔昆虫とプエルトリコの森林の節足動物の大幅な減少が詳細に報告されており、その主な原因は化学物質の過剰使用であるとされている。気候変動は問題を複雑化させており、気温上昇によって渡り鳥の移動パターンや繁殖周期が変化している。これはより広範な生態系崩壊の前兆としても議論されている。
さらに国際貿易は病気や侵略的害虫を蔓延させ、地域の昆虫群集を壊滅させている。アジアではヨトウガ(夜盗蛾)がトウモロコシ作物を壊滅させ、農薬使用量の増加を促し、間接的に昆虫の減少に繋がっている。
世界の食糧供給への影響は深刻かつ差し迫った問題になっている。アーモンドのほぼすべてをミツバチの受粉に依存しているアメリカでは、ミツバチの大量死が続けばアーモンド生産量が50%減少し、価格が高騰して輸出が圧迫される可能性がある。
同様にブラジルの大豆畑では、捕食昆虫の減少は農作物に被害を与える害虫の発生増加を意味し、農家はこの悪循環の中で化学薬品の投入量を増やすことを余儀なくされている。
畜産業も例外ではなく、昆虫は土壌中の養分を循環させ、牛や鶏の飼料品質を高める。昆虫がいなくなると牧草地が劣化し、肉や乳製品の収穫量が低下する可能性があるのだ。
ではどのような解決策が考えられるのか。ポイントは対象を絞った介入にあるという。農薬の改善はもちろん、自然保護活動家たちは畑の縁に野生の花を植えて生息地を提供するといった農業を提唱している。EUでは補助金によってこうした取り組みが奨励されており、初期のデータでは地域の昆虫の個体数が最大30%増加したことが示されている。

バイオテクノロジー企業は化学物質を使わずに害虫に耐性を持つ遺伝子組み換え作物を開発しており、有益な昆虫への二次被害を軽減している。
技術革新も生まれている。AIを搭載したドローンは昆虫の個体数をリアルタイムで監視し、被害を最小限に抑える精密農業(precision agriculture)を可能にしている。シリコンバレーのスタートアップ企業は、実験室で培養されたミツバチに投資しているが、その規模については依然として課題である。
将来的には、食用昆虫が食料安全保障のギャップを埋める可能性を秘めている。アフリカやアジアの一部では、コオロギやミールワームなどの食用昆虫が持続可能なタンパク質源として養殖されており、損失を相殺できる可能性がある。
米ITメディア「WebProNew」によれば「昆虫黙示録」は回避可能であるという。政策改革から個人の選択に至るまで、協調的な行動によって、これらの重要な個体群を再建し、我々全員を支える食糧供給を確保することができるということだ。
そういえば今年の夏はセミの鳴き声もすいぶん控え目だった感があるが、一説では昆虫に限らず現在の地球は“6度目の大量絶滅”に突入したとの見方もある。食物生産に直結するだけに昆虫の減少を抑止し回復する未来を望みたいものだ。
参考:「WebProNew」ほか
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2024.10.02 20:00心霊世界で進行する「昆虫黙示録」の戦慄… 個体数の急減が招く世界的な食糧危機の悪夢とはのページです。農業、昆虫、生態系、大量絶滅、食物連鎖などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで


