アステカを超える黄金の都「シボラ」北米大陸に眠るとされた“7つの都市”伝説の真実とは

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 古来、失われた都市や忘れ去られた文明、そして想像を絶する財宝の伝説は、多くの冒険家たちを未知の世界へと駆り立ててきた。プラトンが記述したアトランティスや、古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』に登場するドワールカのように、歴史と神話の境界線上に存在する都市は数多い。

 そしてアメリカ大陸にも、探検家たちの欲望を刺激してやまなかった伝説がある。それが「黄金の7つの都市」、そのひとつとされる「シボラ(Cibola)」だ。

伝説の起源はイベリア半島にあり

 シボラの伝説は、大航海時代のアメリカ大陸で突然生まれたわけではない。その起源は8世紀、ムーア人によるイベリア半島侵攻まで遡る。

 伝説によれば、713年に7人の司教がアラブ勢力の手から逃れるために半島を脱出し、大西洋を渡って西方の未知の島にたどり着いたという。そこで彼らはそれぞれ黄金に満ちた都市を建設したと伝えられている。当初はポルトガルのオポルトから逃げた司教たちとされていたが、後にスペインのメリダからの脱出劇として語り継がれるようになり、レコンキスタ(国土回復運動)の完了やコロンブスのアメリカ到達と重なって、伝説は現実味を帯びていった。

新大陸での「黄金郷」探索

 アステカ帝国の征服によって莫大な富を手にしたスペイン人たちは、北の大地にさらなる黄金の都があると信じるようになった。アステカ人自身が「黄金は北からもたらされた」と語り、彼らの故地である伝説の島「アストラン」も北にあるとしていたからだ。

 1528年、パンフィロ・デ・ナルバエスの遠征隊がフロリダで遭難し、生き残った4人がメキシコまで大陸を横断するという壮絶な旅をした。その生存者の一人、アルバル・ヌニェス・カベサ・デ・バカらが持ち帰った「北方に巨大な都市がある」という噂が、黄金の7つの都市伝説と融合し、熱狂的な探索ブームを引き起こしたのである。

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修道士が見た「幻影」と遠征の結末

 噂を検証するため、ヌエバ・エスパーニャ副王アントニオ・デ・メンドーサは、修道士マルコス・デ・ニサを調査に派遣した。案内役を務めたのは、先の遭難から生還した奴隷のエステバニコだった。しかし、エステバニコは先住民に殺害されてしまう。

 生き残ったマルコス修道士は、遠くから「テノチティトラン(アステカの首都)よりも巨大で、銀や宝石で飾られた都市」を目撃したと報告した。この報告を信じた副王は、フランシスコ・バスケス・デ・コロナド率いる大規模な遠征隊を派遣する。

 しかし、1540年に現地に到達したコロナドが見たものは、黄金の都ではなく、質素なプエブロインディアンの集落(ハウィク遺跡)だった。そこには財宝など微塵もなく、海も見えなかった。マルコス修道士の話は誇張、あるいは幻影だったのだ。失望したコロナドは力ずくで地域を占領したが、黄金の7つの都市の夢は露と消え、やがて歴史の波間に忘れ去られていった。

 黄金の輝きを追い求めた男たちの情熱は、乾いた大地に消えた。シボラの伝説は、人間の尽きることのない欲望が見せた、美しくも残酷な蜃気楼だったのかもしれない。

参考:The Ancient Code、ほか

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