「死体が歩いて帰ってきた!」一度は死んだと思われた男が、満身創痍で奇跡の生還。標高8000mで”捨て置かれた男”が辿り着いた境地

エベレスト登山中に起きた史上最悪の嵐から奇跡的に生き延びた49歳の男性は、一度は救助の登山家に死んだと思われ雪中に捨て置かれたのだった――。
■エベレストで凍死寸前の臨死体験
1996年5月、米テキサス州の病理学者、ベック・ウェザーズ氏は、探検ガイドのロブ・ホール氏の企画でエベレスト登山隊に参加した登山客の1人だった。
ウェザーズ氏は慢性的なうつ状態に悩まされており、その影響を軽減するために登山や運動に取り組むようになり、このエベレスト登山で自分の中の何かが変えられるとの期待を寄せていた。
登山隊の1員としてエベレストの登頂を目指したウェザーズ氏だったが、凍てつく寒さと高地での気圧低下の中で、1年半前に眼科手術を受けた目に異変が起きていることに気づいた。
山頂への登頂が近づいていたが、急激な視力低下に見舞われたウェザーズ氏はメンバーに自分はここで待っているので先に登頂してここに戻って来てほしいと頼み、待つことにしたのだっだ。
運の悪いことにこの後、山は猛吹雪に襲われる。
不幸にもホール氏は山頂で死亡し、一行は下山を開始するも視界不良で隊列はバラバラになり、方向感覚が失われキャンプを見つけるのが困難になっていた。散り散りになった数人のメンバーは遭難状態にあり、ウェザーズ氏もそのうちの1人であった。
吹雪が収まってから要請に応じて別の登山隊のガイドたちが捜索を行い、行き倒れになっているウェザーズ氏が発見されたのだが、助けられる者を優先するために、気を失って倒れているウェザーズ氏は助かる見込みがないとしていったん捨て置かれたのだった。

しかしその後、奇跡的にもウェザーズ氏は低体温性昏睡から目覚めた。若干視力を取戻していたウェザーズ氏は、なんと自力でキャンプにたどり着いたのだ。
キャンプに戻ってきたウェザーズ氏を見てメンバーは大いに驚いた。まさに“ウォーキング・デッド”のように、死体が歩いて帰ってきたかのようであった。
ウェザーズ氏は回想録『Left for Dead:My Journey Home from Everest』(2000年刊)の中でその時の様子を印象的に綴っている。
「私を見た途端、ジョン(仲間の登山家)の顎は胸の真ん中まで落ちた。私は死んだはずだった。低体温症の場合、私のような驚くべき蘇生は、避けられない死を遅らせるだけだというのが通説だ。(妻の)ピーチに電話をかけ、私が死んではいないが重傷だと告げた。彼らは(最悪の事態を考慮し)彼女に偽りの希望を与えないようにしていたのだ」(同著より)

その後、ウェザーズ氏はドクターヘリで病院に運ばれ緊急手術を受けることになる。
「椅子に座ったまま、右の眉毛の大きな塊が髪の毛も含めて手の中に落ちたのを覚えています。その後、廊下を歩いていると、足の親指が剥がれて、ひょいひょいと飛んでいきました」(同著より)
担当した外科医のマイク・ドイル氏は「どう伝えたらいいのか分からないが、君の右手には血液が全く流れていない。手首より上で止まっている。そして左手にもほとんど血液がない。何と言っていいのか分からない」とウェザーズ氏に告げたという。
ウェザーズ氏の右腕は肘と手首の間の半分で切断され、左手の4本の指と親指、そして両足の一部も切断された。鼻も切断されたが、耳と額の組織でいったん額に移植されて再建された。
「額の中央の皮膚から、なんとなく鼻らしきものが切り取られました。それから、耳の軟骨と首の皮膚を使って、新しい鼻の形を整え、全体の構造を整え、額に逆さまに生やしました」(同著より)

しかしこの臨死体験はウェザーズ氏の人生をより良い方向に変え、彼はこの先もこのまま進むつもりであると述べている。
「人生で初めて心の平安を得ました。目標や成果、物質的な所有物といった外的な要素で自分を定義しようとしなくなりました。人生で初めて、ありのままの自分の中に心地よさを感じているのです」(同著より)
多大な身体的犠牲を払うことになったウェザーズ氏のエベレスト登山だったが、文字通り人生を大きく変える出来事となった。うつを克服できたウェザーズ氏は前出の著書を執筆、出版し、医療活動の傍らで講演活動なども行っている。著作を原作にした映画『エベレスト 3D』(2015年)も製作されて注目を集めた。長い人生で何が幸いするかわからないものである。
参考:「Mirror」ほか
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