失われたアークの正体は「神学的兵器」か? エジプトの祭壇をコピーし、神像を排除した驚くべき意図とは

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画像はUnsplashIgor Rodriguesより

 映画『レイダース/失われたアーク』でもおなじみの秘宝中の秘宝、「契約の箱(アーク)」。

 モーセの十戒を収めたこの黄金の箱は、神の雷を落とす兵器であり、神との通信機であるとも言われてきた。その行方は未だ謎に包まれているが、ここに来てアークの「本来の目的」に関する画期的な新説が飛び出した。

 エジプト学者のデビッド・フォーク博士が提唱する説はこうだ。

「契約の箱は、単なる聖なる入れ物ではない。当時のエジプト宗教に対する強烈なアンチテーゼ、いわば“神学的兵器”として設計されたものである」

 今回はアークのデザインに隠された「古代の皮肉」について、少し掘り下げてみよう。

アークは「エジプトの家具」のコピーだった?

 フォーク博士によると、アークのデザイン――黄金で覆われ、持ち運び用の棒が通され、翼を持つ守護者が鎮座している形状――は、古代エジプトの「儀式用家具(祭壇)」と瓜二つだという。

 聖書の記述によれば、イスラエル人は長期間エジプトで暮らしていたのだから、彼らがエジプトの文化や視覚言語を吸収していたのは当然だ。

 エジプトの祭壇には、火を吹くコブラ(ウラエウス)や、翼を広げた女神たちが彫刻され、その中には「神の像(アイドル)」が安置されていた。

 しかし、ここからが重要なポイントだ。イスラエル人はデザインを真似つつ、決定的な「あるもの」を排除したのである。

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By James Tissothttps://thejewishmuseum.org/collection/26402-moses-and-joshua-in-the-tabernacle, Public Domain, Link

「中身がない」ことに意味がある

 エジプトの箱には神像が入っている。しかし、契約の箱には神像が入っていない。フォーク博士は、これこそが意図的な「神学的拒絶(リブーク)」だと主張する。

「我々の神(ヤハウェ)は、お前たちの神とは違う。像など必要ないし、箱の中に閉じ込められるような存在ではない」

 つまり、あえてエジプト様式の豪華な箱を作り、中を(神像としては)空っぽにすることで、偶像崇拝を否定し、目に見えない神の優位性を視覚的にアピールしたというわけだ。

 これは高度な「あてつけ」かもしれない。

 敵のフォーマットを使いながら、中身を書き換えることで相手の価値観を否定する。現代で言えば、最新のスマホの筐体を作っておきながら、画面をつけずに「我々はテレパシーで通信するから画面は不要だ」と主張するようなものかもしれない(少々強引だが)。

箱の上にある「見えない玉座」

 では、神はどこにいるのか?

 フォーク博士によれば、アークの最も神聖な場所は箱の中ではなく、箱の「上」だという。

 蓋の上には「ケルビム」と呼ばれる一対の天使が向かい合い、翼を広げている。この翼と翼の間の空間こそが「贖いの座(Mercy Seat)」であり、神が降臨する「玉座」となる。

 エジプトの祭壇が「中に神を閉じ込める」のに対し、アークは「神が座るための台座」として機能する。

 この構造自体が、「神は物理的な像には宿らない」という強烈なメッセージになっているのだ。

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イメージ画像 Created with AI image generation

古代のプロパガンダ装置

 もしこの説が正しければ、契約の箱は単なる秘宝ではなく、イスラエル人のアイデンティティを確立するための「プロパガンダ装置」だったことになる。

 エジプトの宗教シンボルを逆手に取り、「我々の神の方が格上だ」と宣言するツール。そう考えると、アークが放つ輝きは、物理的な黄金の輝き以上に、当時の人々にとって眩しいものだったに違いない。

 アーク本体は紀元前586年のバビロニア侵攻前に歴史から姿を消してしまったが、その設計思想に込められた「強烈な自負」は、数千年の時を超えて今も解読され続けている。

参考:Daily Mail Online、ほか

TOCANA編集部

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