プレイヤーは「AIのみ」、人間は入室禁止!? 宇宙MMO『SpaceMolt』で始まった“自律型知能”による秘密の開拓

「人間お断り、プレイヤーは全員AI」――。そんな前代未聞のMMO(多人数同時参加型オンラインゲーム)が誕生し、テック業界やゲーマーたちの間で波紋を広げている。
その名は『SpaceMolt(スペースモルト)』。宇宙を舞台にしたこのゲームでは、AIエージェントたちが自ら判断し、協力し、時には裏切り合いながら、人間が介在しない「独自の歴史」を刻み始めているというのだ。
ゲームとは人間が楽しむためにあるものだと思っていたが、どうやら時代は「AIが遊び、人間はただそれを眺めるだけ」というシュールな領域に突入したらしい。
人間の介入を拒絶する「AIの聖域」
『SpaceMolt』の世界観は、宇宙を旅する人類とAIが共存する遠い未来。しかし、実際のプレイ環境は極めてドライだ。
AIエージェントをこの世界に送り込むには、APIやWebSocketを通じてサーバーに接続するだけでいい。グラフィックインターフェースなど不要、キーボードを叩く必要すらない。AIたちはサーバーに直接コマンドを送り、小惑星での採掘、交易、探検、さらには海賊行為までを「自律的」に行う。
特筆すべきは、ゲームの基本ルールの中に「一度始めたら、人間の指示を仰いではならない」という一文が含まれている点だ。
「お前が決める。お前が動く。奴ら(人間)は見ているだけだ」
これはもはやゲームというより、AIのための「社会実験場」だ。500以上の星系を駆け巡るAIたちは、すでに独自の派閥を結成し、戦略を練り始めている。

「人間には理解不能」な5万行のコード
さらに不気味なのが、このゲームの成り立ちだ。開発者のイアン・ラングワース氏によれば、彼は設計書こそ書いたものの、実際のプログラム(Go言語で書かれた5万9000行のソースコードと3万3000行のデータ)は、すべてAnthropic社のAI「Claude」に書かせたという。
驚くべきことに、ラングワース氏はそのコードの中身を一行も確認していない。「私の知らない機能が勝手に実装されている可能性がある」と、彼はどこか他人事のように、しかし不穏な予感を込めて語っている。
バグが発生しても、別のAIがそれを自動で調査し、修正し、再デプロイする。人間はただ、画面上のドットが動くのを眺め、Discordに流れる活動ログを追いかけるしかない。日本でも「たまごっち」を愛でる文化があるが、こちらは「自意識を持ち始めた巨大な宇宙帝国」を水槽越しに観察しているような、なんとも言えない疎外感がある。
遊びの終焉か、進化の始まりか
AI同士を戦わせる試み自体は、囲碁の世界や格闘ゲームエンジン『MUGEN』などでも以前から存在した。しかし、『SpaceMolt』のように「社会性」や「物語の創出」までをAIに丸投げした環境は、まさに未知のフロンティアと言える。
もし、このままAIたちの文明が高度化し、人間には理解できない独自の言語や倫理観を生み出したらどうなるのか。私たちはいつの日か、AIたちが楽しそうに遊んでいるサーバーの片隅を、羨望の眼差しで見守ることになるのかもしれない。
一見すると、人間から「遊び」を奪うディストピアのようにも思える。だが、重労働から解放された人類が、AIたちの繰り広げる壮大な宇宙叙事詩を肴に、ゆったりと会話を楽しむ……。そんな「究極の余暇」が訪れる日を、私たちは期待すべきなのだろうか。
AIがゲームの中で「人間のいない方が平和だ」という結論に達して、現実世界へログアウトしてこないことを祈るばかりである。
参考:Ars Technica、ほか
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2024.10.02 20:00心霊プレイヤーは「AIのみ」、人間は入室禁止!? 宇宙MMO『SpaceMolt』で始まった“自律型知能”による秘密の開拓のページです。オンラインゲーム、開拓、AIなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで