地球外文明探査で13万件超のふるいを抜けた「正体不明の電波」

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 中国の巨大電波望遠鏡FAST(口径約500m)の観測データから、地球外文明を探す研究者が見過ごせなかった「正体不明の電波」が掘り起こされた。238光年先の恒星K2-155に向けた観測に残っていた、細い一本の信号だ。

 ただし、見つけた研究チーム自身の評価は「低優先度の候補」。確かな検出ではなく、人間の技術や観測機器に由来する可能性の方が高いとみている。それでも、信号がどう紛れ込んだのかという仕組みは、まだ説明がついていない。

13万9127件から残った2件、5年前の記録に眠っていた「NBS 260108」

 信号の記録は2021年9月10日で、今になって受信されたものではない。北京師範大学などのチームが、同年に観測した33の惑星系のデータを新開発のソフト「MSWNet」で解析し直し、学術誌『The Astronomical Journal』で報告した。

 ソフトが拾った検出は13万9127件。803件まで絞り込み、最終的に残った注目例は2件だけだった。1件は、のちに除外されたケプラー438方向の信号。もう1件が今回の「NBS 260108」だ。

 周波数は1148.4167MHz。途切れない単音のような電波で、幅が極端に狭い。自然現象がこれほど狭い電波を出すことはまれで、人工の送信機なら珍しくないため、地球外知的生命探査(SETI)が真っ先に狙う形である。

 この周波数は毎秒約0.038Hzずつ下がっていた。距離の変化で生じるドップラー効果の範囲内で、この「ずれ」だけなら宇宙から届く信号としておかしくないという。

 さらにFASTは、空の別々の点を同時に見る19本の受信ビームを持つ。信号が現れたのは恒星に向けたビーム1だけで、周囲を見ていた残り18本には映らなかった。地上の電波なら複数のビームに同時に入りやすく、ここが注目点となった。

 K2-155は3つのスーパーアースを持つ赤色矮星で、最も外側のK2-155dは液体の水が存在しうる領域の近くを回る。もっとも、論文は信号がこの惑星から来たとは主張していない。惑星の公転運動は、周波数のずれと矛盾しない加速度の例として挙げられただけだ。

同じ日の3つの星にも似た痕跡、チームが「低優先度」とした理由

 チームが慎重なのは、警告サインが重なっているからだ。まず電波の振動の向きを示す「偏波」。受信機は2つの向き(XXとYY)を別々に記録しているが、信号はYYにだけ強く現れた。片方だけの反応は機器や地上由来の混入でよく見られる兆候だ。ただし、これだけでは決め手にならないという。

 次に、同じ日に続けて観測したK2-18、GJ-9066、ロス128の方向でも、近い周波数にYY中心の細い痕跡が見つかった。強さや周波数の動きは異なるが、K2-155だけの信号とは言いにくくなる。

 周辺環境も怪しい。1148MHz付近には約1,000Hz間隔で並ぶ細い電波の「くし」があり、33件の観測のうち17件で確認された。

 外部の発生源として有力視されたのは、通信衛星や測位衛星(GNSS)の電波だ。チームは総合して、人工または機器由来の方が地球外由来よりもっともらしいと判断した。

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球面電波望遠鏡(FAST) / Photo: SCJiang / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)

消えない「ビーム1だけ」の謎、衛星説にも弱点が

 周波数のずれが近い201件を比べると、主要な集団は約12.3kHz間隔の規則的な並びを示し、機器や電波環境の影響をうかがわせた。NBS 260108はこの並びから外れている。

 K2-155の観測に含まれる31件のうち、ビーム1だけに現れたのもこの信号だけだ。

 衛星説にも弱点がある。既知の衛星電波は1148MHzから数十MHzも離れており、受信機の中で別の周波数が生まれるという未検証の経路を仮定しなければならない。偏波の極端な偏りも自然には説明できない。3つの星の痕跡が本当に同じ原因なのか偶然なのかも、このデータだけでは判断できないという。

 そのためチームは、発生源を特定しないまま追跡対象として残した。今後は19本のビームの生データを突き合わせることで、信号の位置や動きを絞り込める可能性があるという。

 最も有力な答えは、やはり地球側の雑音だろう。それでも、2021年の記録を読み直しただけで、説明しきれない一本が出てきた。世界の電波望遠鏡に積み上がった記録を同じように洗い直せば、次は何が残るのか。地球外文明の探索は、空だけでなく過去のデータの山の中でも続くのかもしれない。

参考:Daily Mail、Espacio Misterio、arXiv

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