>  >  『奇界遺産2』佐藤健寿インタビュー 圧倒的写真と秘話

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画像は、『奇界遺産2』(エクスナレッジ)


 中国の洞窟村から、東南アジアの新興宗教、アメリカのUFO基地・エリア51まで撮影取材し、世界に散りばめられた奇妙な人や物、場所を収録した『奇界遺産』。写真集としては異例のヒットを飛ばした同作から4年の月日が経ち、続編である『奇界遺産2 THE WONDERLAND'S HERITAGE 2』が刊行された。今作ではロシアからスタートし、中東やアフリカなどを中心に取材を敢行。前作同様、“一風変わっている”と思える『奇界から来たかのような産物』を撮影してきた著者の佐藤健寿氏は取材中に何を感じ、何を見たのか、話をうかがった。





■「人間がやってきたことはすべて“変”なんじゃないか?」

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バイコヌール宇宙基地『奇界遺産2』より

――今回はバイコヌール宇宙基地からスタートし、表紙もロケットが飛んでいるシーンから始まっているなど前回とは違いますね。

佐藤健寿氏(以下、佐藤) 前作と同じ感じでもつまらないし、人類という訳の分からない生き物の活動を前作とは違う角度から総括しつつ、また20世紀的な世界の最後のイメージとして、宇宙ロケットを表紙にしました。チェルノブイリについて言えば、前作は、洞窟村から始まっていました。あの場所は、洞窟に住むということは本来非合理的なのに、あの環境では合理的である、つまり合理性がひっくり返っていたんです。洞窟外に住居は作ってもらっているんだけど、彼らは“洞窟のほうが住みやすい”という理由でそこに居る。そのため、『2』を出すにあたって、逆に合理性、科学をつきつめて住めなくなった地を考え、その代表格はチェルノブイリじゃないかと思い至ったんです。

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インタビューに答える佐藤氏

――確かにチェルノブイリは、原子力発電所が爆発し、放棄された。科学の進歩に人間が追いつけなくなり、手に負えなくなったという地というイメージがあります。

佐藤 チェルノブイリは前作が出てから一番最初に行ったんですよ。そしたらその4カ月後に東日本大震災が起こってしまった。それまでは、“チェルノブイリ”という言葉は日本ではほとんど使われなかった単語だったのに、震災後は一気に使われ始め、なおかつその意味がまったく変わってしまったんです。

 掲載するかどうするかも悩んだんですけど、色々と撮影しているうちに、『奇界遺産』もチェルノブイリもロケットも人間が作っている変なもの、という意味では同じものなのではないかという気がして来たんですよ。アートも奇妙な住居も原子力発電所も人間の探究心や創造力が辿り着いた、必然的な結果なんじゃないかと。原発についていえば、原発賛成とか反対とかそういう議論ではなく、それよりもなんで人間は制御不能な“怪物”まで造ってしまうのか、ということの方が興味があるんです。それは今作でも扱っているアウトサイダーアートとかの制御不能な創作意欲と、直線的に繋がっているような気がして。


――人間の創造力がいわゆる“変なもの”に行ったり、科学的、文明にも影響を及ぼす、つまりは二極化するということでしょうか?

佐藤 二極化したものだと思いがちだけど、実際はそうではなく、ロケットを作る科学者も一人でアウトサイダー・アートや変わった住居を作っている人物も、その根本は実はあまり変わらないんじゃないかと。だから極端な話、子どもが時間を忘れて落書きをする心がなければ、ロケットは生まれない。が、一方でその延長には廃墟(原発)も生まれる。簡単に言えば人類がやって来た事は全て変なんじゃないか? という話ですね。それこそ洞窟の壁画から宇宙ロケットまで。

 表紙のロケットも、ナチスが作った大陸間弾道ミサイルの技術をソ連が発展させたR-7というロケットが元になっていて、もとは冷戦中に核ミサイルを飛ばすためのものだった。それが今では人類を宇宙に運ぶメインロケットになっているわけです。きっとロケットを造ったセルゲイ・コロリョフ博士は、政府の目的はともかくとして、ただロケットを造るのがピュアに楽しくて仕方なかったと思うんですよね。実際コロリョフは国から命令を受けて、核弾頭を載せるロケットを造る名目で予算を稼ぎつつ、実は有人飛行用に設計していた、とも言われています。

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