一体誰が眠るのか?エジプトで発見された「名もなきファラオ」の巨大墓

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

 エジプト考古学の歴史に、また新たな1ページが刻まれた。古代都市アビドスにある「アヌビス山」の地下7メートルという深い場所から、約3600年前に造られたとみられるファラオの墓が発見されたのだ。

 この発見は、王家の墓が集まる聖なる地(ネクロポリス)の研究に新たな光を当てるものとして期待されている。しかし、研究者たちの心を躍らせると同時に悩ませているのが、墓の主であるファラオの正体だ。一体誰が、この壮大な墓で眠っていたのか。その答えは、今もなお厚い謎のベールに包まれている。

盗掘で消えた王の名… 残された手がかりと深まるミステリー

 なぜ、このファラオは「謎」なのだろうか。その最大の理由は、王の身元を示す最も重要な手がかりである名前が失われてしまっているからだ。

 発掘を率いたペンシルベニア大学のエジプト学者、ジョセフ・ヴェグナー氏によると、王の名前はもともと、埋葬室へ続く地下通路の壁を飾る漆喰の壁画にヒエログリフ(古代エジプトの象形文字)で描かれていたという。しかし、無情にも古代の盗掘者たちによって壁は破壊され、現在では判読できるほど文字が残っていないのだ。

 とはいえ、すべての手がかりが失われたわけではない。埋葬室の入り口の側面には、女神イシスとネフティスの色あせた碑文が残されている。また、墓全体の装飾やテキストの様式が、同じくアビドスで発見されたセネブカイ王の墓と類似していることも判明しており、これが王の正体を解き明かす鍵になるかもしれない。

激動の時代に築かれた巨大な王墓

 この墓が造られた約3600年前は、エジプトにとって激動の時代であった。当時、エジプト北部は「ヒクソス」と呼ばれる西アジア系の民族に支配されていた。ヒクソスは「異国の支配者」を意味し、馬や戦車といった当時としては画期的な技術をエジプトにもたらしたことで知られる。今回発見された墓の主も、そんな不安定な時代を生きた王の一人だったと考えられる。

 墓の構造は、石灰岩で造られた埋葬室を、高さ約5メートルにもなる日干しレンガのアーチが覆うという壮大なものだ。エジプト考古学部門の責任者、モハメド・アブデル・バディ氏は、この墓が「これまで知られていたアビドス王朝のどの墓よりも大きい」と指摘する。その規模から、墓の主はセネブカイ王よりも前に統治していた王の一人ではないか、との見方も浮上している。

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ヒクソス Hermann Vogel(1854–1921)による作品(パブリックドメイン) 出典

歴史の空白を埋めるか?今回の発見が持つ大きな意味

 アビドスは古代エジプト最古の都市の一つであり、紀元前1700年から1600年頃にかけて上エジプトを支配した「アビドス王朝」の拠点だった。しかし、この時代については史料が乏しく、多くのことが謎に包まれている。

 シカゴ大学の考古学者、アンナ=ラティファ・モウラード=シゼック氏は、今回の発見を「歴史の空白を埋める、極めて重要なもの」と評価する。これまでほとんど知られていなかった時代の支配者や文化について、私たちの理解を根底から変える可能性を秘めているからだ。

 もちろん、壮大な歴史のパズルを解き明かすには、まだ多くの研究が必要となるだろう。この謎多きファラオの墓は、古代エジプト史の新たな扉を開く、まさに第一歩なのである。

参考:Express.co.uk、ほか

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