圧倒的スケール! 村上隆の五百羅漢図を見ると「妙に元気が出る」のはナゼ? 五百羅漢寺で探ってきた

圧倒的スケール! 村上隆の五百羅漢図を見ると「妙に元気が出る」のはナゼ? 五百羅漢寺で探ってきたの画像3 《五百羅漢図》[青竜](部分)2012年 アクリル、カンバス、板にマウント 302×2,500cm@Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co.,Ltd. All Rights Reserved.

 そして、次の写真は《五百羅漢図》[青竜]の一部分。

 まっすぐに立ち、両手で自分の腹を大きく開いて見せているのは、「羅睺羅」(らごら)という釈迦の息子である。人は誰でも仏性を持っていることを示す図柄だそうだが、いくらアートとはいえ、仏教の聖人をここまでコミカルに描いてよいものだろうかという疑問も沸かなくもない。あまりにも現代風に解釈し過ぎている感じがする。しかし、この問いに対する答えを先回りして言えば、むしろこうした描き方こそが、「らかんさん」の伝統に則っていると言えるのだ。


■五百羅漢とはそもそも一体何?

 平安時代をルーツとする「五百羅漢信仰」が最盛期を迎えたのは江戸時代のことである。ただし、信仰の担い手となったのは、公家や武士といった上流階級ではなく、町民など一般庶民であった。人々が「らかんさん」と呼んで親しんだのは、当時、本所五ツ目(現在の江東区大島)にあった500体あまりの羅漢の木像であった。

 作者は江戸の名彫刻師・松雲元慶。松雲の「五百羅漢像」の最大の特色は、その表情の豊かさにある。参拝者はさまざまな顔をした五百羅漢像の中から、亡き人の面影を探しあてて偲んだり、自分や友人に似た姿の像を見つけて楽しんだりしたという。

 つまり、五百羅漢とは、その人間味あふれる表情や姿形で庶民を「元気づける」存在だったのだ。こうした歴史的文脈から言えば、村上の《五百羅漢図》は、大衆文化としての五百羅漢信仰の伝統を見事に踏襲しているのである。すると、《五百羅漢図》を制作するきっかけが東日本大震災であったという村上の発言も説得力が増す。村上は絵で人々をエンパワメントしたかったのだ。

 では、当時の木彫の羅漢像とは、一体どのようなものであったのか。それも気になるところである。実は、江戸時代に人気を博した松雲元慶の「五百羅漢像」を約300体も保管・公開している場所があるのだ。東京目黒区の五百羅漢寺である。さっそく、訪れてみよう。

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