ゴビ砂漠に潜む“モンゴリアンデスワーム”の正体とは? 触れると即死、電気ショック… 伝説の怪物『オルゴイ・コルコイ』100年の謎

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ベルギーの画家ピーター・ディルクスによるモンゴリアンデスワーム By The original uploader was Pieter0024 at English Wikipedia. – Transferred from en.wikipedia to Commons., CC BY-SA 1.0, Link

 ゴビ砂漠の広大な砂の下に、今もなお人類の到達を拒む怪物が眠っているという。その名は「モンゴリアンデスワーム」。触れるだけで即死する猛毒を持ち、離れた敵には電気ショックを放つという。体は真っ赤な腸のようで、頭も手足もない。このおぞましい怪物の伝説は、100年近くにわたり探検家や研究者たちを惹きつけ、そして絶望させてきた。果たして、それは単なる迷信か、それとも未知なる生物(UMA)なのか。果たして、その正体は科学で説明できるのか、それとも私たちの知らない何かなのか。100年にわたるミステリーの深淵を覗いてみよう。

恐怖の伝説「オルゴイ・コルコイ」

 モンゴリアンデスワームは、現地では「オルゴイ・コルコイ」と呼ばれる。「大きな腸のワーム」を意味するその名は、まさしくその姿を言い表している。目撃談を総合すると、その特徴は以下のようになる。

姿:ソーセージのように太く、血のような赤い色をしたワーム状の生物。体長は60cmから、大きいものでは1.5mにも達する。頭も目も口も、そして手足もない、のっぺりとした外見。

能力:その体には猛烈な毒があり、触れるだけで人間や家畜を即死させる。さらに、遠くの獲物に対して腐食性の毒液を噴射したり、強力な電気を放って仕留めることもできるという。

生態:普段はゴビ砂漠の砂深くに潜んでおり、雨が降った後、水場近くの地表に姿を現すとされる。砂の中を移動する際には、地表に波のような盛り上がりができるという。

 これらの特徴は、まるでSF映画から飛び出してきたかのようだ。しかし、この伝説はモンゴルの人々にとって、単なる作り話ではなかった。

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100年の探求史 – 西洋世界を震撼させた怪物

 この怪物が西洋世界に知られるきっかけとなったのは、1926年、アメリカの著名な古生物学者ロイ・チャップマン・アンドリュースが著書『古代人の痕跡を追って』で紹介したことによる。彼自身は懐疑的だったものの、当時のモンゴルの高官たちがその存在を固く信じていることに衝撃を受けたという。

 その4年前の1922年には、当時のモンゴル首相ダムディンバザルが「ソーセージのような形で長さは約2フィート。頭も脚もなく、あまりに毒性が強いため、触れるだけで即死する」と、極めて具体的に記録を残している。

 この衝撃的な伝説に魅せられ、数多くの探検家がゴビ砂漠へと足を踏み入れた。チェコの未確認生物研究家イワン・マッケルレは生涯をかけて3度も調査隊を送り込み、イギリスのリチャード・フリーマンも後に続いた。しかし、彼らが持ち帰ったのは、決定的な物証ではなく、地元民からのさらなる目撃談だけだった。誰もその姿を写真に収めることも、死骸を手にすることもできなかったのだ。

怪物の正体 – 科学のメスが入れた伝説の“中身”

 探求が進むにつれ、科学者たちは伝説の正体を合理的に説明しようと試みてきた。まず、ミミズのような本物の「ワーム(環形動物)」が、灼熱のゴビ砂漠で生き延びるのは不可能だと考えられている。また、一部で候補とされた地中棲の爬虫類はモンゴルには生息していない。

 そこで最も有力な仮説として浮上したのが、「タタールサンドボア」というヘビの誤認説だ。

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タタールサンドボア By Vincent MalloyOwn work, CC BY-SA 3.0, Link

 タタールサンドボアはゴビ砂漠に生息する無毒のヘビで、砂に潜る習性がある。そのずんぐりとした体と、頭と尾の区別がつきにくい外見は、部分的に見ればワームのように見えなくもない。1983年の調査では、地元住民がこのヘビを見て「オルゴイ・コルコイだ」と証言した記録もある。

 しかし、このヘビは赤くなく、もちろん電気も猛毒も持たない。では、なぜこれほど恐ろしい伝説が生まれたのか。その鍵は「コルコイ」という言葉にある。モンゴルの民間伝承において、「コルコイ」とは元々、危険な生物、特にヘビを指すタブー名(忌み名)だった。砂漠で起きる不可解な死や家畜の急死を、人々は目に見えない脅威、すなわち「コルコイ」の仕業として説明してきたのかもしれない。砂漠の過酷な自然への畏怖が、一匹の無害なヘビを、触れることさえ許されない死の怪物へと昇華させたのだ。

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伝説は死なず – ポップカルチャーに棲みつく怪物

 結局のところ、モンゴリアンデスワームの物理的な証拠は一つも見つかっていない。目撃談も1950年代をピークに途絶えがちだ。しかし、怪物は死ななかった。それは人々の想像力の中へと棲み処を移し今も生き続けている。

 映画『トレマーズ』に登場する地中怪物「グラボイド」や、SF小説の金字塔『デューン/砂の惑星』の巨大な「サンドワーム」は、モンゴリアンデスワームから着想を得たと言われている。2010年には、そのものずばりのテレビ映画『モンゴリアン・デス・ワーム/赤い砂漠の怪物』が製作され、SNSでも定期的に話題に上るなど、その存在感は衰えを知らない。

 科学的には「誤認」の一言で片付けられるかもしれない。しかし、ゴビの砂の下に眠る「オルゴイ・コルコイ」の伝説は、自然への畏怖と未知なるものへの尽きない好奇心が生み出した、人類の豊かな文化遺産そのものだ。証拠はない。だが、それでいいのかもしれない。なぜなら、地球上にはまだ、私たちの知らない何かが眠っていると信じるロマンが、そこにはあるのだから。

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画像は「Amazon」より

参考:WikipediaAtlas ObscuraLive ScienceHowStuffWorksCryptid Wiki、ほか

文=青山蒼

1987年生まれ。メーカー勤務の会社員の傍らライターとしても稼働。都市伝説マニア。趣味は読書、ランニング、クラフトビール巡り。お気に入りの都市伝説は「古代宇宙飛行士説」

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