首都直下地震「死者2万3千人」の想定は甘すぎる?政府が隠す、本当の被害とは?

■被害想定は甘すぎる?

 今回の作業部会の想定では、M7級の大地震だけでも19ものパターンが検討されている。このうち、首都中枢機能への影響が最も甚大と思われる都心南部直下地震で、前述のように最大死者2万3千人という値を出した。

 この想定を見ると、もっとも死者が多いのは「火災」によるもので、約1万6千人としている。その次が「建物倒壊等」で、約6,400人となっている。

この被害想定に対して、異論を唱える人々もいる。関西大学社会安全学部の河田恵昭教授は、「週刊現代」(講談社)の取材に対して、「いや、これはもう勘繰りでもなんでもなくてね。東京オリンピックに向かって国際的な不安を起こしたくない。そういう想定になっているんですよ」(「週刊現代」2014年1月18日号)と語っている。

 南海トラフ地震で最大死者32万人という被害想定が出ているのにもかかわらず、東京都だけで1,300万人、都市圏では3,500万人前後も人口があるほどの過密都市圏で、本当にこの程度の死者で済むのだろうか。

どうもこの被害想定には、本来は検討しなければならない要因での死傷者数が含まれていないようなのだ。たとえば「火災・停電・情報遅れ」などによって発生するパニックによる死傷者など、統計的なデータが少ないものである。

 また、液状化現象に詳しい濱田政則・早稲田大学理工学部教授からは、このような意見も出ている。

「役所の縦割り行政の弊害ともいえるでしょうが、今回の新想定には経産省が主導して進めてきた、湾岸部の液状化に関する大規模な調査の結果が、まったく反映されていない」(「週刊現代」2014年1月18日号)

 川崎周辺に広がる古いコンビナート地帯が大きな打撃を受けるだろうが、そうした地域のデータも盛り込まれていないという。

 2011年8月11日の松原照子氏の世見では、東京に直下地震が起きれば、「石油タンクが地震で炎上したらと思うと心配なのです」と書いている。そのような大惨事にならないことを祈るばかりだ。

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