インカ時代の20代女性ミイラの死因は宗教儀式の生け贄だった?500年前一体何があったのか?

インカ時代の20代女性ミイラの死因は宗教儀式の生け贄だった?500年前一体何があったのか?の画像1アタカマ砂漠で発見された女性のミイラ「PLoS ONE」より

 三つ編みにされた髪の毛などを見ると、当然のことなのですが、今から数百年前に彼女が実際に生きていたのだという事実に思いを馳せずにはいられません。

 この女性のミイラは、1890年代にチリのアタカマ砂漠で発見され、博学だった当時のバイエルン王女テレーゼが自国に持ち帰ったものです。その後、現在に至るまでバイエルン州立考古学収集館で長らく保管されてきましたが、この度、ミュンヘン大学の古生物病理学者アンドレアス・ネルリッヒ氏によって頭蓋骨や組織、DNAが詳しく調査された結果、彼女の死因と人生の一端が判明してきました。

 今月26日、学術誌「PLoS ONE」にて発表された内容によると、女性の年齢は20歳~25歳。彼女が生きていた時代は、16世紀前後のインカ時代でした。そのおさげ髪の根元は、外国からもたらされたと思われる細いロープによって固定されており、ヘアバンドはアルパカやリャマの毛から作られています。彼女が主に食していたのは、海産物やトウモロコシでした。

 興味深いのは女性の死因です。調査によって、彼女は中南米に見られる「シャーガス病(寄生性の原虫であるクルーズトリパノゾーマによる感染症)」という感染症を発症しており、命が危険にさらされている状態であったと考えられるそうです。

 しかし彼女は「シャーガス病」で死んだのではなく、宗教儀式の生贄となって殺された可能性が高いといいます。CTスキャンによって、頭蓋骨の額部分が粉砕していることが判明したのです。鋭利な刃物で複数回にわたって刺されたことによるものだとされています。

インカ時代の20代女性ミイラの死因は宗教儀式の生け贄だった?500年前一体何があったのか?の画像2ミイラのCTスキャン画像「PLoS ONE」より

 その後、女性はすぐにアタカマ砂漠に埋葬されたため、熱い砂と乾燥した気候が遺体をミイラへと変えました。インカ帝国において、子どもや女性を生贄として神に捧げる行為は「カパコチャ」として知られていますが、彼女もその儀式のために殺された一人であったということが、発見後100年以上の時を経て判明したのでした。彼女のミイラは、バイエルン州立考古学収集館において8月中旬まで一般公開されています。ドイツを訪れる予定のある方は、彼女に会いに行ってみてはいかがでしょう。
(ヨムノ・トルグ)

関連キーワード:, , ,

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

『十物語の代償』修学旅行で招いた忌まわしき怨霊の執念【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

『十物語の代償』修学旅行で招いた忌まわしき怨霊の執念【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.07.24 20:00心霊
人魚が守る島の掟と宝【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

人魚が守る島の掟と宝【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.07.10 20:00心霊
「三途の川を見に行く方法」対岸に立つ存在の正体とは…時を経て現れた闇の存在【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

「三途の川を見に行く方法」対岸に立つ存在の正体とは…時を経て現れた闇の存在【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.06.26 20:00心霊
夕暮れ時の「目玉の雨」高校教師が語る戦慄の恐怖体験【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

夕暮れ時の「目玉の雨」高校教師が語る戦慄の恐怖体験【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.06.12 20:00心霊

インカ時代の20代女性ミイラの死因は宗教儀式の生け贄だった?500年前一体何があったのか?のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで