“胡散臭い”カウンセリング治療、3分診療… 「心の治療の現場」はどうなっている?
『セラピスト』(最相葉月/新潮社)1999年に約204万人だった精神疾患の患者数は、2011年には約320万人と、100万人以上増加(厚生労働省・2011年推計)し、カウンセリングが大ブームとなっている。「犯罪、事故、災害」が起きれば、学者やカウンセラーがテレビや新聞、雑誌に登場し、「心のケア」「心の復興」の大合唱となるが、心のケアの現実はきわめて危うい。
待合室にずらりと並ぶ患者。メンタルクリニックの医師は患者の顔をちらりと見て、2、3の簡単な質問をし、すぐにパソコン画面に目を移す。眠れないなら睡眠導入剤、過呼吸なら精神安定剤…と、症状に応じた薬がその都度処方される、典型的な「3分診療」だ。患者(クライエント)も病院の混在を理解し、「薬を処方されればそれでいい」と割り切ってその場を去る。そして、理想の医師(セラピスト)を求める長い旅を続けることになるのだ。
こうした現状に疑問を投げかけているのが、『セラピスト』(最相葉月/新潮社)だ。大ヒットした、ノンフィクション作品『絶対音感』『星新一』の著者である最相葉月氏が、密室で行われ、守秘義務があり、外からうかがい知れない世界である心の治療の在り方に迫っている。
■『セラピスト』が問いかけるもの
そもそも、心の治療には大きく分けて「精神療法」と「心理療法」がある。
「精神療法」は、精神科の医師の治療計画のもと、医療行為として行われる心理的援助のことで、医療保険の対象になっているものもある。ただし、現在は1980年にアメリカ精神医学会で発表された診断基準(DSM)が事実上のスタンダードになっており、「どんな気分の落ち込みやふさぎこんだ状態も『うつ』と診断されてしまい」、「うつ病を含む気分障害の定義が広がったことから、入院が必要ではない比較的軽度な患者数が増加」するという問題が出てきている。
一方で、精神科医が治療の対象としない心の不調、たとえば、人間関係の悩みや不登校などを扱う、心理学を土台とした心理的援助を「心理療法」と呼ぶのだが、この心理療法について、葉月氏は懐疑的な意見を述べている。
「私はカウンセリングに対してうさんくささを感じていた。まず値段がばらばらである。相場はあってないようなもので、50分あたり5千円くらいから、高い場合は1,2万円を支払う」「カウンセリングを行う人を意味する『カウンセラー』という言葉はそれ以上にあいまいである。臨床心理士、心理療法士、精神分析家、産業カウンセラー、認定心理士、認定カウンセラー、認定臨床心理カウンセラー……と呼称はさまざまあり、中には怪しげな肩書きを自称する人もいる。(略)心理職には国家資格がないからやむをえないとはいえ、こうも呼称や資格が乱立していては、治療を必要とする人を混乱させるばかりである」(本書より)
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