サッカーでのPK戦前の“なんとなく負ける“感はなぜ当たる?

 アメリカの小学5年生にパズルをさせる実験がある。最初は簡単なパズルをさせ、スコアからそれぞれの子どもに「君は賢い」と褒め、またある子には「よく頑張った」と励ます。パズルが終わったあと、「次にやるパズルはどんなのがいいか」と子どもたちに問うたところ、「賢い」と言われた子の多くが易しいパズルを選び、「頑張った」と言われた子の多くがより難しいパズルを選んだ。また賢いと言われた子にはできないとすぐにあきらめる傾向が見られ、頑張ったと言われた子は粘り強く解こうとする子が多かった。賢さを褒められた子はまずスコアを上げたがるが、パズルをどう解くかには興味がなく、他人の評価を気にする。一方、努力を褒められた子は、スコアを上げることよりも、新しいことを学ぶ意欲が強かったという。

 人間は自尊心を持ちすぎると、努力をしなくなってしまう。天賦の才能や知性を過大評価してしまい、それで何とかなると思いこむためだ。自信をつける暗示も、方向性を間違えると機能しなくなってしまう好例だろう。

「――人間の心についてはまだわからないことのほうが多い。しかしひとつ確実に言えるのは、私たちが心の中に思い描く世界は、現実の世界とは別のものであるということだ。それを常に忘れてはならない」(本文より)

 なんでも気の持ちようとはよくいったもの。人間の想像力は病を治し、向上する原動力となり、あるいは成功の妨げにもなる。国民の期待が、自国の代表チームの力になることも、またその逆に働く場合もあることを私たちは忘れてはならないだろう……。
(文=平野遼)

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