クリエイターが言う「作風」って何なの? 映像作家・大月壮インタビュー
■計算からは生まれない、自分が驚くような作品を作りたい
――これから発表する予定の作品や出展する予定のイベントがあれば教えてください。
大月 そうですね……発表しちゃいけないものが一番面白いんですよね(笑)。
――それは作品ですか? お仕事でしょうか?
大月 仕事です。
■何かを作る時、設計図を作り過ぎると奇跡は起きない
大月 そこは本当に行き当たりばったりだから。「バカ走り」を作る時も1か月前には想像さえしていなかったし、今も常にそういう状態なんでなんとも言えないです。「バカ走り」ができ上がったときは、自分でも驚いたんですよ。ただバカなことをやっただけのはずなのにこんなニュアンスでこんな感じ方をするんだって。自分で言うのもなんですけど、こんなに感動する映像ができちゃったっていうことに自分でも驚いたし気持ちよかった。――新しい映像の構想はありますか?
――作り手自身の予想を裏切る作品だった。
大月 今の自分が想像できないようなものを作りたい。何かを作る時って、特に映像の仕事の場合、絵コンテを描いたりしますよね。それはあらかじめ設計図を作るってことで、つまりは奇跡が起こりにくいってことなんですよ。「バカ走り」の場合は全く設計図がなかった。いきなりフリースタイルで作ったものが、計らずも感動的な映像にできあがったんです。計算づくで論理的に作っていないのに、いい結果が生まれるっていうのは自分の考えや意図を超えていることだから、すごく気持ちいい。科学や論理に対してのオカルトの存在意義に近いかも。TOCANAっぽい締めになってよかった(笑)。またそういう作り方をしてみたいですね。
■TOCANA動画コンテスト参加者へのアドバイス
――現在、TOCANAでは、読者参加の動画コンテストの参加者を募集しています。大月さんには審査員を引き受けていただいたのですが、応募者のみなさんに向けて何かアドバイスをいただけますか?
大月応募作品に期待したいのは、自分なりの面白さとか感性を素直に映像にしてほしいということです。6秒という枠でサクッとスマホで楽しめるような映像っていままでなかったでしょう。だから、いままでの映像のありかたとかCM的なことだとか、これまであった決まり事とか枠組みみたいなことなんか全部忘れてほしい。考えていないなら考えなくていいと思います。多分、Twitterで流れてきた動画が面白いか面白くないかってそういうことですよね。
――自分が面白いと思ったことを素直に映像にする、ということでしょうか?
大月 そうです。6秒ってホントに短いからストーリーの導線とか必要ない。小難しく考えないで、見せたいものだけバーンと見せられるように作れるはずだから。小賢しいものじゃなくて、振り切ったところだけ抜き出した「6秒の頂点」のようなものが見たいです。歌で言えばサビの一番いいところ。ギターで言うと一番鳴いているところですよね。その「鳴き」の部分だけでいいんだから。とにかく、絶頂感が欲しいです。
(取材・写真・文=渡邊浩行)
■大月壮 Sou Ootsuki
1977年神奈川県生まれ。独創的でぶっ飛んだ作風からマジメなクライアントワークまで柔軟にこなす映像クリエイター、ディレクター。近年はWEBやテクノロジーを独自の価値観で映像に取り入れたディレクションを多く行い、2013年にはkinect等を用いた世界に類を見ないMC BATTLEイベントをANSWR、2.5Dと共に開発、主催。オリジナル作ではニコニコ動画から始まり文化庁メディア芸術祭入選まではたした「アホな走り集」が有名。オフィシャルサイトはコチラ「SOU OOTSUKI WEB」
■作品集「バカ走り」販売サイト
BEAMS Onl!ne Shop
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2024.10.02 20:00心霊クリエイターが言う「作風」って何なの? 映像作家・大月壮インタビューのページです。渡邊浩行、大月荘、映像作家などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで