【冤罪疑惑】4人を殺害し、“透明”になるまで切り刻んだ偽装夫婦 ― 死刑囚・風間博子は無実か?

■山崎の供述に違和感、車は誰が? 冤罪の可能性が見え隠れする不可解さ

 後に「博子さんは無実だと思います」と法廷で証言することになる山崎の当初の供述では、その夜、カリーナバンに、関根、風間、山崎の3人が乗り、遠藤宅に向かったという。山崎はカリーナバンの中で待ち、関根と風間が遠藤宅へ入り、殺害行為が行われた、というのだ。

 そして、2人の遺体を乗せたカリーナバンに関根、風間、山崎の3人が乗り、万吉犬舎に寄った。その駐車場に停まっていたクレフを山崎が運転、風間がカリーナバンを運転して付いていき、片品に向かったというのだ。

 この供述を元に、風間が殺人犯だとされた。だが、それでは一体、万吉犬舎の駐車場にどうやってクレフは現れたのか? というのが今回の再審請求の主内容だ。


■捜査員の日誌「万吉犬舎でクレフは確認されていない」

 捜査員の記した行動確認捜査日誌に寄れば、その日、午後2時47分から午後7時34分まで、万吉犬舎を監視していたが、クレフがそこに来たという記載はない。また、(山崎の供述によれば)山崎が片品から乗ってきて停めたままになっていたはずのベンツもまた、記載されていないのだ。

 そのため、「クレフは昼の間、ペットショップ近くの駐車場に停めてあり、それで自宅に帰ってから遠藤宅に向かった」という風間の供述が正しく、山崎の供述が虚偽であることが、これで証明されたことになる。ベンツに乗ってきたという山崎の供述も、犯行に使われたカリーナバンで最初から行動していたというのであれば、事前共謀を疑われるがゆえ、虚偽であろう。

 再審請求の新証拠として提出されたのは、万吉犬舎の駐車場と監視場所との位置関係を、航空写真や動画で撮影したDVDである。駐車場と監視場所の間は田畑で、遮るものは何もなく、距離も120メートルしか離れていない。駐車場には壁も柵もなく、停まっている車両そのものが見える。実際に出入りのあった車は、車両ナンバーまでが日誌に記載されている。

 さいたま地裁は再審棄却の理由として、「行動確認を実施した警察官らは、万吉犬舎前の駐車場やその周辺に出入りする自動車の存在や動き等の全てを把握し、かつ、行動確認日誌に漏れなく記載していたわけではないと強く推認できる」としている。

 要するに、クレフやベンツは、捜査員が見落としたというのだ。だが、どんなに怠惰な捜査員であっても、一時的に出入りしただけの車両ならともかく、長時間に渡って停まっていた車両を見落とすことなどあり得ない位置関係だ。ましてや優秀な人材が揃っているはずの、埼玉県警の捜査一課が見落とすことなど考えられない。

 最初に検察が立てた「筋読み」に対して、矛盾する客観証拠が出てきても、それを見直すことができないという悪弊が、ここにも見て取れる。繰り返すが、風間博子が犯した死体遺棄損壊の罪は償わなければならない。それは決して軽い罪ではないが、死刑に値する重罪でないことは明らかだ。20年近くも幽閉されるに値する罪でもない。

 再審棄却の決定に対して、8月14日、風間博子は即時抗告申立書を東京高裁に提出した。真実を見極めるために、再審が開かれることを、強く望むものである。

■深笛義也(ふかぶえ・よしなり)
1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか? 革命か? それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)がある。ほか、著書はコチラ

文=深笛義也

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか?革命か?それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)、『罠: 埼玉愛犬家殺人事件は日本犯罪史上最大級の大量殺人だった』(サイゾー)がある。ほか、著書はコチラ
Twitter:@giyagiyagiya

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