「テレパシー実験」遂に成功?人類が迎える新たな「脳コミュニケーション」時代とは?

■人類が迎える新たな「脳コミュニケーション」時代

 今後この一連の過程が効率化され、「変換機」の性能が進歩すればもっと複雑なメッセージも短時間でやり取りできることになる。そして、この技術は少し考えただけでも極めて多方面にわたっての応用が期待できる。「おそらく今後20年でこの技術に基づく実用的なアプリケーションを開発することができるでしょう」とベーグ博士は語る。

 また他の研究者はこの技術は、脳卒中で動けなくなった患者や半身不随の人、「閉じ込め症候群(locked-in syndrome)」の人々を救うと考えている。なぜなら、脳の情報を他の機器に送ることによって、話すことや動くことが可能になるからだ。例えば脳の指令で動く義足などが考えられている。またベッドで寝たきりの昏睡患者ともコミュニケーションも可能になるかもしれない。

 しかしその一方、この技術の確立によって多くの倫理的問題が浮上してくることも避けられないだろう。犯罪防止のため警察がこの技術を用いて人々の心の中を読み取ったり、裁判で証言者が真実を話しているのかどうかを確かめるために使われることが予想されるし、あるいはまだ脳が死んでいない状態であれば殺人事件の死体からも直接話を聞ける可能性すらあるのだ。

「この技術の発見は新しい“脳コミュニケーション”時代の第一幕です。今後は、未来の脳コミュニケーション時代を規制するための新たな倫理基準と法律が整備されるでしょう」と、バルセロナ大学のチャールズ・グラウ博士は語っている。

 パソコンや携帯電話、スマートフォンなどは恐らく当初我々が予想していた以上の速度で進歩し瞬く間に普及してきた。この「脳コミュニケーション」技術も、いずれ加速度的な進歩と普及を遂げる時代がやってくるのだろうか。そこに夢の未来社会を思い描くと共に、一抹の恐怖も感じてしまうのは筆者だけではないだろう。驚くべき進歩を続けるコミュニケーション技術に今後も注目していきたい。

参考:「Daily Mail」、「PLOS ONE」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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