ホラー映画史に名を残す新たな悪魔誕生? 不気味なピエロホラー『クラウン』


■映画『クラウン』のあらすじ

 個人で不動産業を営むケント(アンディ・パワーズ)は、空き家の見回り中に、いわくありげな古い箱を見つける。箱の中には古びたクラウンの衣装一式が入っていた。その日は息子の誕生日だったということもあり、ケントは箱の中にあった衣装と白塗りの化粧を使ってクラウンに変身して我が家に帰る。おどけたケントのクラウン姿に大喜びをする息子と近所の子どもたち。ところが誕生会が終わった後でケントはある異変に気づく。顔の白いメイクが落ちないばかりか、赤い付け鼻も取れない。また、着ていた衣装も肌にくっついて脱げなくなっただけでなく、チリチリパーマのカツラや衣装さえ肌と同化していたのだ。

ホラー映画史に名を残す新たな悪魔誕生?  不気味なピエロホラー『クラウン』の画像4c2014 Vertebra Clown Film Inc.


 服を脱ぐためには、まるで動物の毛皮を刃物で剥ぐかのように、自分の皮膚を傷つけなければならなかった。こうしてケントは、自分ではない何者かに変わり始めていることを感じ取る。そしていつしか、無性に子どもの柔らかい肉をむしゃぶり食いたいという衝動に駆られていく。この呪われた衣装の正体とはなにか。

ホラー映画史に名を残す新たな悪魔誕生?  不気味なピエロホラー『クラウン』の画像5c2014 Vertebra Clown Film Inc.

 その謎を解くカギは、子ども食いの悪魔クロイン伝説にあった。雪山の洞窟にすみ、真っ白な雪のような肌に、鼻を赤く腫らしていたクロイン。そんな滑稽な顔を見て笑う子どもたちを洞窟に誘い込んでは、一人ずつ食らったという悪魔を現代に甦らせるという設定が実に奇抜であり、これまでのピエロが登場するホラー映画にはない斬新さが魅力だ。個人的には、悪魔クロインが道化クラウンに変名するという安易なところも好き。


■ピエロがテーマの映画

ホラー映画史に名を残す新たな悪魔誕生?  不気味なピエロホラー『クラウン』の画像6c2014 Vertebra Clown Film Inc.

 ところで、これまで日本で劇場公開されたピエロ関連のホラー映画は非常に少ない。

 思い当たるところでは、精神科病院を脱走した3人の患者がカーニバル会場で惨殺したピエロになりすまし、留守番をしている幼い兄弟を襲うというストーリーの映画『マニアック1990』(90年)。

 強烈な印象を残した映画といえばサイコパス(精神異常者)ホラーの代表作シリーズ『ハロウィン』(79年)だろう。6歳の幼い坊やがピエロの格好で実姉をメッタ刺しにした導入部――のちにブギーマンと呼ばれるマイケル・マイヤーズ。そう、大ヒットシリーズ『ハロウィン』の初登場シーンのピエロの格好が鮮烈な印象を残した。

 そのほか、ピエロホラーの劇場未公開作品を列挙すると、サーカス団でいじめられるピエロの父と娘が復讐のために結託して団員たちを惨殺する、目を覆いたくなるような血しぶき映像が満載の映画『ブラッディピエロ/100人連続切り裂き』(未公開)やハンバーガーチェーンのピエロ・キャラクター“ホーニー”に扮した殺人鬼が次々と若者を殺しまくる『デスバーガー』(未公開)。都市伝説を題材にした『ルール4』(未公開)には、殺した相手の頭部を戦利品のように次々と持ち去るピエロの殺人鬼が登場。白塗りのスマイルメイクの下に隠された素顔が見えない不気味さや異常さが、こうした映画の根幹を成している。

 そして、すべてのピエロホラーの代表作といっても過言ではないのが、スティーヴン・キング原作の『IT イット』(91年)だろう。メイン州デリーの町で起こった不可解な児童連続殺人事件。このピエロ姿の怪物ペニーワイズは、実在する連続殺人鬼ジョン・ゲイシーがモデルになっている。ちなみに、本作の公開後、ピエロ恐怖症を訴える人が多く現れるようになったという。

 最後に、毛色の変わったピエロホラーを紹介したい。タイトルこそ興味を引く映画『キラークラウン』(未公開)は、ある日、隕石の落下を目撃した主人公たちが現場に行くと、そこには巨大なサーカステントがあり、殺人ピエロたちが次々と街の人たちを襲っていたという内容なのだが、その正体はサーカステント型UFOで地球侵略に来たエイリアン=ピエロ星人だったというもので、ホラー要素は皆無。

 また『変態ピエロ』(08年)なるタイトルの映画があるが、新世代のデヴィッド・リンチ作品という触れ込みがなされているように、現実と虚構が交錯する、不可思議かつ難解な内容。ホラーでもなければ変態やエログロといった興奮要素もないため、ご注意を。

おすすめシチュエーション

 夫婦愛や家族愛が深い父が、無理やりピエロにされて地獄に堕ちる不条理さ!!

怖さ度5
笑える度0
オシャレ度1
マニア歓喜度5
びっくり度5

(文=深沢光太郎)

■劇場公開日
3月21日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

■配給
プレシディオ

■上映時間:90分
■出演:アンディ・パワーズ(『イン・ハー・シューズ』『OZ/オズ』)
ローラ・アレン(『Dr.HOUSE/ドクター・ハウス』『クリミナル・マインド』)
ピーター・ストーメア(『コンスタンティン』『アルマゲドン』)
■公式サイトhttp://www.clown-movie.jp/
c2014 Vertebra Clown Film Inc.

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