麻原彰晃とは何だったのか? 〜オウム真理教のアジトに潜入して思ったこと〜
■オウムのアジトに潜入した
前述のように、筆者は当初から麻原に教えを乞いたいといった気持ちはなく、もちろんオウム真理教とも無縁であり続けたが、ある時に、オウムのアジトに潜入するという貴重な経験をしている。といっても、自ら望んで行ったのではなく、そうとは知らずに潜入してしまったのだ。
1990年代の後半のある時、筆者が当時運営していたWebサイトの掲示板で知り合った若い女性が、「百瀬さんに会いたいと言っている人がいます」と言うので、彼女について行くと、中央線のある駅から徒歩で数分のところにあるヨガ道場に着いた。
そこの女性指導者が、筆者に会いたいと言っていた人だった。筆者がその女性としばらく話していると、「実はここはオウム真理教の道場なのだ」ということを告げられた。もちろん、サリン事件の後のことだ。つまり、知らずのうちに、凶悪事件の首謀団体のアジトに案内され、幹部と話をしていたことになる。
「このまま居ては強制加入させられたり脅迫されたりするのでは?」と内心不安に思いながらも、平静を装って彼女と話を続けた。話しているうちに、彼女の修行や来世に対する考え方が非常に真面目かつ真剣であることに驚いた。そう感じたままを伝えると、「そりゃ、カルマがかかってますから!」と、彼女は非常に強い口調で言った。つまり、彼らが厳しい修行を行うのは、自分たちの悪いカルマを浄化してより良い世界へ昇華するための切実な手段であるのだ。
だが、彼らの考え方や修行がどんなに高尚なものであっても、テロによる殺人が倫理的に許されるわけはない。そこで、勇気をもって、麻原の殺人についてどう思うかを彼女に尋ねたところ、「今のあなたには、どんなに説明してもわからないでしょう」と言われてしまった。
その後、彼女は筆者に霊的素質があるなどと持ち上げて、オウム真理教への勧誘を始めた。だが、もちろん凶悪犯罪を首謀する宗教団体とは関わり合えない。また、当時筆者にはヨガで師事する人物がいたので、その旨を伝えて、毅然とした態度で断った。すると、彼女は私の師に関心を持った様子だったので、師の著作を紹介しておいた。そして、穏やかな雰囲気で無事に帰ることが許された。
もちろん、犯罪集団であるオウムの幹部である彼女と、根本的な価値観を共有することはできない。だが、お互いに本音ベースで語り合うことによって、人間同士の対話ができたと感じたものだった。気が向いたらまた遊びに来るようにと言われたが、その後に訪れることはなかった。
■麻原は詐病か?
事件後に明らかになった麻原の素顔は、信者を失望させなかったのだろうか?
1995年5月16日、山梨県上九一色村のオウム教団施設に強制捜査が入り、麻原彰晃が逮捕された。現金960万円の札束と寝袋を抱えて、階段天井の隠し部屋に隠れていた。隠し部屋を発見した警視庁の牛島寛昭警部補がインタビューに応じ、「麻原はおびえたようにがくがくと震えていた」 ( 時事通信、2015/03/17)と当時の様子を語っている。さらに拘置所では、失禁するためにオムツを履かされるなど無様な姿をさらしてしまった“尊師”。
しかし、それでも信者たちは信仰を捨てないほどに洗脳されているのだろう。
2004年2月に死刑判決を言い渡された麻原だが、10年以上たった今でも、死刑執行されていない。その理由としてまことしやかに囁かれているのは、麻原が精神病だから死刑執行できないとか、執行権限をもつ法務大臣が信者からの報復行為を恐れて判を押さないのだといったことだ。だが実際は、高橋克也や平田信などの共犯者の公判が続いているため、執行を待っているというところが妥当かもしれない。
前述の精神障害説だが、麻原の四女である松本聡香が執筆した『私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか~地下鉄サリン事件から15年目の告白~』(徳間書店)では、彼女が拘置所の父と面会した時の様子が書かれている。2007年3月のことだったが、彼女はそれまで麻原に対して一方的に語りかけるだけだったが、麻原は突然に看守に悟られないようにして彼女の名前を呼んだのだという。それで聡香氏は、「父はやっぱり詐病だ」と悟ったというのだ。これに対して、やはり精神障害だという意見もあり、真相は闇に包まれたままだが、松本聡香氏の意見は肉親が感じたこととして、説得力があるかもしれない。
筆者がオウムのアジトで幹部と話して思ったのは、洗脳というものは本当に恐ろしいものだということだ。この人達はもう一生洗脳状態から解かれる可能性はないのだろうか、考えたものだった。世に言われる「洗脳」の中にもいろいろあるが、麻原によるオウム信者たちへの宗教的洗脳は、その最たるものであり、一筋縄では解けないものだと身を持って感じたものだった。読者の方々も、カルト教団による洗脳にはくれぐれも気をつけていただきたい。
(文=百瀬直也)
参考:ANNnewsCH
百瀬直也(ももせ・なおや)
超常現象研究家、地震前兆研究家、ライター。25年のソフトウエア開発歴を生かしIT技術やデータ重視の調査研究が得意。ブログ:『探求三昧』、Web:『沙龍家』、Twitter:@noya_momose
※百瀬氏が企画・執筆したコンビニムック『2015予言 戦慄の未来記』(ダイアプレス)、大好評発売中!
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2024.10.02 20:00心霊麻原彰晃とは何だったのか? 〜オウム真理教のアジトに潜入して思ったこと〜のページです。オウム真理教、カルト、百瀬直也などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで