ツタヤが取り扱いを拒否!? 奇形の食人鬼映画『ヒルズ・ハブ・アイズ』ができるまでの珍エピソード

ツタヤが取り扱いを拒否!? 奇形の食人鬼映画『ヒルズ・ハブ・アイズ』ができるまでの珍エピソードの画像1※画像:映画『サランドラ』チラシ

――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!

■今回の映画『サランドラ』『ヒルズ・ハブ・アイズ』

 10年ほど前、ホラーマニアの間で「“あの”『サランドラ』がリメイクされるぞ!」と話題になったことがある。それが2006年に製作されたアメリカホラー映画『ヒルズ・ハブ・アイズ』のことだ。しかし、この作品は新旧共に「いわく付き」として知られ、公開までの道のりは波乱続きだった。まずは『サランドラ』の、何が“あの”なのかを説明しよう。

 私が学生だった1970年~1980年代には、『決して、ひとりでは見ないでください~「サスペリア」』、『誰でも12回は必ず飛び上がります~「アリゲーター」』や、『初めて心を持ったパニック映画(意味不明)~「カサンドラ・クロス」』などの、配給会社の社員が必死にオツムを捻って絞り出したキャッチコピーが付けられた映画があふれていた。これらに、多くの映画ファンがまんまと騙さ……いや、乗っかってチケットを購入していたわけだが、中でも東宝東和が配給した『サランドラ』(84年・米)にまつわる宣伝戦略の顛末は爆笑モノだった。

■『サランドラ』の驚愕のPR

ツタヤが取り扱いを拒否!? 奇形の食人鬼映画『ヒルズ・ハブ・アイズ』ができるまでの珍エピソードの画像2マイケル・ベリーマン 画像は、Wikipediaより

 この作品のタイトル『サランドラ』は邦題で、アメリカでは『The Hills Have Eyes』として1977年に公開されていた。核実験場跡地で暮らす人喰いキ○ガイ一家と、旅行中にたまたまそこを車で通りかかった一家による凄惨な殺し合いが描かれている。『エルム街の悪夢』『スクリーム』のウェス・クレイヴンが無名時代に監督を務め、スキンヘッドの異相で強烈なインパクトを持つ怪優マイケル・ベリーマンが出ていることでもファンに知られるが、決して傑作というわけではない。
 
 配給権を得た東宝東和は、『サランドラ』を毎年のように公開プログラムに挙げながらも幾度も機会を逸し、ついには公開が1984年になってしまう。しかしコレを逆手に取り「封印されていた」とキャッチを付け、さらに「全米38州で上映禁止」(単に少数の州でしか上映しなかっただけ)、「目が潰れるほどの恐怖」などと盛りに盛ってメディアで煽り、『サスペリア』『サンゲリア』『ゾンゲリア』など、この頃流行っていた語呂のよい横文字タイトルに倣って「サラマンドラ(特撮テレビ番組『ウルトラマン80』をはじめとする「ウルトラシリーズ」に登場する架空の怪獣)」をもじった『サランドラ』と、テキトーに付けて発表したのだ。

 そして極めつけは「戦慄のジョギリ・ショックがやってくる!!」という魅惑のキャッチフレーズ。ハゲ(ベリーマン)が持っていた暗闇の中で一瞬しか映らない刃物を「ジョッキリ切るからジョギリ」と、これまたテキトーに名付け、模型で再現し映画館の看板に貼り付けたのだ。

 蓋を開けてみると、これらの宣伝効果が実を結び、ジョギリにショックを受けたい映画ファンが劇場に殺到。公開1週間で興行収入1億円というスタートダッシュに成功した。しかし、このジョギリは宣伝部の思い込みによる勘違いで、一切劇中に出てこず「ジョギリなんて出てこねぇぞ」と気づかれ始めた2週目以降は観客動員数がガタ落ち。

 看板には「ウソツキ」と落書され、ジョギリの模型はへし折られていたというエピソードも残されている。アメリカでは翌1985年、『HILLS HAVE EYES PARTⅡ』が製作されたが、日本では『サランドラⅡ』の公開が劇場で行われることはなくビデオ・DVDのリリースのみとなった……。

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