痴漢冤罪でホーム飛び降り自殺の青年の無念は晴れるのか? 真実明かさぬ警察と裁判の行方
■証人尋問内容
この流れについて、新宿駅西口交番の警察官(当時)は、3月9日の証人尋問で以下のように証言している。
被告代理人 新宿署に電話したら?
警察官 「痴漢か喧嘩かわからない」と言うと、「こっちで確認する。電話を待つように」と指示があった。
被告代理人 その後、電話は?
警察官 「もう少し詳しく聞くように」と言われた。
被告代理人 再度、当事者から聞いた?
警察官 食い違いはなくならないので、係長に電話した。「やはりわからない」と言うと、係長は「こっちで確認する」「本署に同行を」と。
つまり、信助さんを新宿署に連行した理由の中には、信助さんに告げた「相互暴行の当事者」に加え、はじめから「痴漢容疑」もあったということだ。もちろん、容疑を告げずに連行するのは違法捜査だ。信助さんは相互暴行の当事者として捜査協力をするつもりだったのに、いきなり、痴漢容疑が加わった。心理的にパニックになっても仕方がない状況だ。
■特命捜査本部
信助さんが亡くなったことを警察官たちが知ったのは翌日だった。そこで、事件をもう一度捜査するために設けられたのが「特命捜査本部」だ。詳しくはコチラの記事を参照してほしい。
信助さんの死後、特命捜査本部は、被害女性らとともに新宿駅構内で実況見分を行った。そして、その証言だけをもとに信助さんを書類送検。検察庁は「被疑者死亡の理由」で不起訴として処理したのだ。
尚美さんは、“新宿署は容疑を告げない違法捜査で連行し、それに対する指摘を防ぐために特命捜査本部を設置して、早々に処理した…”そう考えている。
特命捜査本部の責任者は、刑事課の課長代理(当時)だった人物だ。証人尋問で次のように証言している。
原告代理人 12日に母親が新宿署に電話をした。新宿署が母親に説明したのは?
課長代理 細かくは知らない。電話があったことは知っている。
原告代理人 13日に副署長が母親に電話をしているのは知っているか?
課長代理 うーん。
原告代理人 ご存じない?
課長代理 はい。
原告代理人 このとき、痴漢事件について、副署長がどう説明したのか知らない?
課長代理 はい。
原告代理人 (JRから提出を受けた)防犯ビデオの画像を刑事課では見ていない?
課長代理 見ていない。
原告代理人 目撃者探しは?
課長代理 個別には当たっていない。
原告代理人 防犯ビデオを解析すればわかりますが、痴漢したかどうかはわからないですよね?
課長代理 はい。
原告代理人 関係者の中で、痴漢されたと言っているのは被害女性だけ?
課長代理 はい。
原告代理人 ほかの人は目撃していない?
課長代理 はい。
原告代理人 痴漢している場面ははっきり映っている? お腹をもんだ、という場面ですが。
課長代理 映っていません。
裁判官 痴漢を目撃している人はいた?
課長代理 判断できない。いるかもしれない。
原告代理人 翌年(10年)1月11日、原告(尚美さん)が副署長を訪ねたとき、副署長は「やったのか、やっていないのか。痴漢と特定できないと認定した」と言っている。でも、このとき特命捜査本部は動いている?
課長代理 はい。
原告代理人 結論が出ている言い回しになっている。このときはこういう結果が出ていた?
課長代理 この時点では私はわかりません。
原告代理人 副署長が原告にどう説明するのかの相談を受けていたのか?
課長代理人 記憶にない。この時点では痴漢と断定してない。捜査している途中だった。なぜ、副署長がそう説明したのかわからない。
特命捜査本部が設置されなければ、この痴漢容疑は再捜査されなかった。信助さんが亡くなったから、当日の警察官の捜査についてもう一度確認しなければならなかったのだ。
ただ、ビデオでも痴漢行為を確認できず、目撃者探しもせず、被害女性の証言と実況見分だけで書類送検したことになる。仮に、本当に女性が信助さんによって痴漢の被害に遭っていたとしても、証拠がひとつもないのに、被害女性の証言だけで書類送検していいのだろうか?
原告側は当時の新宿署長の証人尋問を要求しているが、被告側がそれになかなか同意しないため、実現してない。
そして5月20日、進行協議が行われた。もともと原告側が証人申請していた新宿署長と原告のほか、副署長と生活安全課長(いずれも当時)も証人申請に加えた。信助さんの死後、原告が新宿署に出向いた際に、なぜ、特命捜査本部が事件を捜査している中で副署長は「痴漢を特定できないと認定した」と説明したのか。そのとき、生活安全課長も同席していることから、この2人を新たに証人として尋問したいと考えている。
警察の誠意が試される日が近い――。
(文=渋井哲也)
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2024.10.02 20:00心霊痴漢冤罪でホーム飛び降り自殺の青年の無念は晴れるのか? 真実明かさぬ警察と裁判の行方のページです。痴漢、冤罪、渋井哲也、新宿などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで