黄金の腕を持つ男 ― 200万人の赤ちゃんをたった1人で救った“献血男”とは?=オーストラリア
■血液の特殊な抗体が胎児を次々救う
そんな悲劇が繰り返された1960年代、ある医療チームが「ジェームスさんの血液には特殊な抗体があり、胎児の命が救えるかもしれない」という研究結果を発表した。
そして、ジェームスさんとダッグを組み、開発されたのが、Rhマイナスの母親がRhプラスの胎児を妊娠したとき、Rh抗体ができるのを防ぐワクチン「抗D(anti-D)」だ。現在、オーストラリアで製造されている抗Dはすべて、ジェームスさんひとりの血液から採取されたものだというから驚愕だ。
なお、なぜ彼がこのような特殊な血液をしているのかは医者も不明だというが、恐らく14歳のときの輸血が原因なのではないかと推測されている。
すでに200万人以上の赤ちゃんを救ったことで数々の表彰を受けているジェームスさん。ひとは彼を「黄金の腕を持つ男」と呼ぶ。
こんなふうに国民的「命の恩人」であるジェームスさんだが、1,000回以上献血をしてもなお、苦手なことがあるという。実はこれまで一度も注射針が腕を刺す瞬間を見たことがないのだそうだ。「あの、チクンが嫌なんです。血を見るのもキライだし」。タフだけど、どこかおちゃめなヒーローだ。
(文=佐藤Kay)
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