『進撃の巨人』の元ネタ映画「フランケンシュタイン・シリーズ」がトラウマレベルの傑作!!


――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!


『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』(1965年 監督・本多猪四郎)
『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966年 監督・本多猪四郎)


 今年もまた8月6日(広島)、8月9日(長崎)と、原爆忌の慰霊式典が両所で催された。そこで思い出されるのが、日本に原爆が投下されてちょうど20年目の1965年8月8日に公開された『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』だ。そしてその第2弾『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』は、『キル・ビル Vol. 2』ほかさまざまな作品に影響を与え、現在公開中の『進撃の巨人』の元ネタとしても知られている。

 西洋の怪奇モンスター「フランケンシュタインの怪物」と日本の伝統芸「巨大怪獣」を戦わせるという新機軸の発想をもとに、特撮の神様・円谷英二率いるゴジラのスタッフが総力を結集したこの2作品は、筆者ほか当時の子どもたちに強烈なトラウマを植え付け、特撮マニアの間では長きにわたり「怪獣映画の最高傑作」として高い評価を受けている。

■『フランケンシュタイン対地底怪獣』

 1960年生まれの私が5歳の時、生まれて初めて映画館で観た映画が『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』だった。この作品は題名の「地底怪獣」に「バラゴン」というルビが打ってあるため、通称『フラバラ』と呼ばれている。

 第二次世界大戦の終戦間際、同盟国ドイツのナチスから「弾に撃たれても死なない兵隊」を作る人工生命体「フランケンシュタインの心臓」が、秘密裏に広島の陸軍病院に運び込まれる。だが、そこへ原爆が落ち、すべてが無に帰したと思われた。それから15年後、広島県内で不気味な風貌をした浮浪児(当時の戦災孤児の呼称)に、民家の飼い犬や小学校の飼育小屋にいるニワトリやウサギが盗まれる騒動が頻発する。登校した子ども達が目にするバラバラに食い散らかされたウサギの死骸がエグイ。

 浮浪児は、被爆者の治療に献身するアメリカ人科学者と戸上季子(1957年、『気違い部落』でデビューした水野久美)が勤める国際放射線医学研究所が引き取る。彼の正体は、ドイツから持ち込まれた人工心臓が人間体に成長したフランケンシュタインの怪人だった。

 オリジナルのフランケンシュタインの怪物を踏襲した眼窩上部の出っ張りに加え、剥き出しの赤い歯茎に1本欠けた前歯というヤバイ風貌ながら、フランケンシュタインは季子に「坊や」と可愛がられ研究所で過ごす。だが、「坊や」は驚異的なスピードで成長し、また突然の刺激に凶暴な一面を見せることがあったため、鉄格子付きの檻に収容される。ここは、戦後の浮浪児が大勢で檻に詰め込まれた非人道的な史実「浮浪児狩り」を想起する。

 フランケンシュタインは場面が変わるたびに大きくなっていて、『進撃の巨人』でいうところの「4メートル級」に始まって「7メートル級」くらいの身長で檻に入っている。50メートルもあるゴジラとは違い、これぐらいのサイズのほうが臨場感を感じて怖い。そして心無いマスコミにフラッシュを浴びせられパニックになったフランケンシュタインは、手錠から自分の手首を引きちぎって脱走。不死身の肉体ゆえ、手首はのちに再生する。

 一方、秋田の地底から有史以前の怪獣バラゴンが甦り、踊り狂う若者たちや農家の家畜を食いながら日本列島を南下していく。そして互いに引き合うように移動するバラゴンと20メートル級に達したフランケンシュタインは、ついに富士山麓で激突する! 当時まだウルトラマンは存在していなかったので、巨人と怪獣の戦いは初めて見る構図だった。死闘の末バラゴンを倒したフランケンシュタインは、突然地割れに飲み込まれて地中に没していく(突如現れた巨大ダコに湖へと引きずり込まれる別バージョンのラストも存在)。科学者の最後の台詞「死んだほうがいいかもしれない。所詮、彼は怪物だ」が空しく響く。

 イギリスの女流作家メアリー・シェリーの原作小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』で語られた「生命の創造に対する倫理」「異形な存在として疎外される怪物の悲哀」をドラマにしっかり描き込んだ、単なる怪獣映画の範疇に止まらない大傑作だ。だが1981年に発行された『ファンタスティック・コレクション・スペシャル 世界怪獣大全集』(朝日ソノラマ)の作品解説に「この作品もいろいろな問題が絡んでいるだけに今後のテレビ放送は難しくなっている」とあった。「いろいろな問題」とは、放射能や浮浪児の件だろうか? 実際、こんなこともあった。名前は伏せるが、私がラジオ番組の収録で御一緒した某有名人が、かつて広島で『フラバラ』の上映イベントをしようと試みたところ、劇場側に拒否されたそうだ。のちに劇場の責任者は作品をちゃんと観て、誤解があったことを当人に謝罪し、『フラバラ』を賛辞したという。いい話だ。

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