引越しの概念すら消える、あまりに革新的な「未来の移住手段」
■1年間ゴミ箱で暮らした男のアイディア
このキューブ型の家(その名も「Kasita」)の創始者は、「ゴミ箱博士」ことジェフ・ウィルソン氏だ。彼は、典型的なひとり暮らしの生活の論評をするためだけに、大型のゴミ箱に1年間住むという、ちょっと極端な実験を行ったのだが、これを機に、従来の住宅設計についてイチから考え直したのだという。
「3平方メートルのゴミ箱の中で、ペットボトルの中に用を足しながら、こんな狭いところで暮らすのは全くクールではないけど、ちょっと面白いことに気づいたんだ。このゴミ箱の家なら、街のどこにでも移動できるし、なんせ格安だ。必要以上にモノを持つこともなく、街の一等地にだって住むことができるんだ」と。
■斬新なKasitaシステム
ウィルソン氏は、ありきたりの結果にならないようにと建築家ではなく、工業デザイナーと手を組んでこのプロジェクトをスタートさせた。工業デザイナーであれば彼の考える利点をわかってくれると考えたのだ。
「小さなアパートやコンテナではなく、もっと何かiPhoneみたいな画期的なものをデザインしてほしいと頼んだんだ。そして今知っている伝統的な建造物をすべて忘れてくれとね」とウィルソン氏は言う。
そしてできたのが、黒川紀章の中銀カプセルアパートさながらの、それぞれの部屋が独立して動かすことのできるこの部屋である。
「小さなスペースを最大限に有効活用できるように工夫されているでしょう。床面積はたったの20平米、今まで無駄にしていた空間を無駄なく使うことができる。荷物用のコンテナより30パーセントも広いし、俺の住んでいたゴミ箱6個分くらいになる、凄いだろ(笑)」(ウィルソン氏)
部屋はガラスをふんだんに用いて圧迫感を感じないよう配慮され、「一人暮らし用に快適なだけでなく、猫やもちろん金魚とも暮らせるように考えているんだ」と続ける。
ドライヤーをはじめ、さまざまな電化製品ははじめから設置され、クイーンサイズのベッドがキッチンの下から出てくるよう色々な仕掛けがある。ガラスは色を変えることでプライバシーにも配慮されている。しかも、それらはiPhoneのSiriのように、ハンズフリーの音声認識によって部屋が自動で行ってくれるというのだ。ニュースが聞きたければそう呟けばいいだけだし、音楽のどのプレイリストを聞きたいかも声に出すだけで自動でやってくれる。部屋の明るさ調整や、目覚ましの設定だって。ウィルソンは月600ドルのレンタル料で2016年のサービス開始を目指している。だが、そのためにクリアしなければならない問題はたくさん残っているが……。
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