歯の再生が可能になる? 抜けた歯が再び生える最新研究とシクリッドの謎!

 多くの現代人にとって“歯の悩み”は逃れようのないシビアな現実ではないだろうか。永久歯は治療を重ねれば重ねるほど磨り減り、失えば2度と戻ってこない。ほかの生活習慣病などは、生活態度を改めることで改善の可能性もあるが、歯だけは一方通行で磨耗し抜けていく。おそらく有史以来、ずっと歯に悩まされ続けてきたはずの人類だが、最新の研究ではなんと永久歯を失っても再び自分の歯を取り戻せる可能性が出てきたというのだ。

■味蕾と歯はもとは同じ細胞

 抜けた歯が再び生えてくるかもしれない――。まさに人類の夢と言っても過言ではない研究を発表したのは、米・ジョージア工科大学のトッド・ストリールマン教授だ。同研究論文は学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に先頃掲載された。

 この研究の鍵を握っているのは、アフリカ東南部にあるマラウイ湖に生息するカラフルな淡水魚、シクリッド(Cichlid)だ。まるで熱帯魚のような色彩豊かなカラーリングのシクリッドだが、実はこの魚の歯は生涯にわたって何回でも生えかわるのである。

歯の再生が可能になる? 抜けた歯が再び生える最新研究とシクリッドの謎!の画像1シクリッド(Cichlid) 画像は「Wikipedia」より

 ストリールマン教授の研究チームはこのシクリッドを発生学的に研究。受精後の胚が分裂し、魚体が形成される過程において、味を知覚する味蕾(みらい)と歯が同じ細胞から作られていることを発見した。味蕾も歯もシクリッドの口の中の上皮細胞(epithelial cells)として現れ、どこかの時点で味蕾になる細胞と歯の組織にわかれるのだ。

我々はシクリッドの味蕾と歯の発達における可塑性を紐解きました。そして現在、もとは同じ細胞を味蕾と歯に分岐させているものが何であるのかを解明しようとしています」とストリールマン教授は「Daily Mail」の記事で言及している。

 シクリッドの受精後の胚が分裂をはじめてから5、6日で口の中の上皮細胞が味蕾と歯に分かれるという。この時点で脳と眼は形成されているが、アゴはまた形成途上にあるということだ。

「この時点のどこかで味蕾になるか歯になるかという、上皮細胞の“進路先”を決めるスイッチが入っていることは明らかなんです」(トッド・ストリールマン教授)

 この“スイッチ”を解明することにより、人間の口内から採取した上皮細胞を歯の組織に発達させることができると考えられているのだ。さらに神経組織と血管がどのようにして歯を“生きた”状態にしているのかを研究することも必要だということだ。歯を医学の力で育成させるという夢に人類は一歩近づいたのかもしれない。

 さらに研究チームはシクリッドとマウスの遺伝学上の違いについても研究を行なった。ちなみにマウスなどのげっ歯類は生涯伸び続ける「常生歯」と呼ばれる歯を持っており、こちらも別の観点からの研究が行なわれている。

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