「世界の薬物汚染マップ」死亡者数・中毒者数・麻薬の種類を比較 果たして日本は?

■タバコより有害性が低い? 緩みゆくマリファナの規制事情

 オーストラリアやカナダ、アフリカ諸国で目立つのが、麻薬の中では最も原始的な部類に含まれるマリファナである。特徴的な形をした大麻草の花冠や葉っぱを乾燥させ、まれに樹脂として精製することもあるが、一般的には紙で巻いたり、単純な構造の水パイプ“ボング”を利用して喫煙される。

 日本をはじめ、多くの先進国で使用は禁じられているが、オランダやポルトガルなど、限られた国では身体的な被害や依存性の薄い“ソフトドラック”として合法化されている。地図において色づいているオーストラリアなども一部の州で合法、その他少量所持なら合法などという国もあり、ところによっては懲役に至らないごく緩やかな取締りが行われている場合もあるようだ。

 マリファナが合法・半ば非合法といった玉虫色の取り扱いを受けるのは、科学的な検証を根拠とし、アルコールやタバコより有害性が低いと断じる報告が医学誌に掲載されるなど、日を追うごとに高まりを見せるマリファナ擁護の動きにならってのことだ。ただし、マリファナがより危険性の高い麻薬へアクセスするための“進入路”として機能することを危惧する「ゲートウェイ・ドラッグ理論」の展開などもあり、評価は一定していない

 実際には、ニュージーランドだけでも1万4,000人を超える中毒者を生み出すなど、その影響は軽視できるレベルとはいいがたい。さらにはマリファナ中毒の治療のために、コカインをはじめとする別種の麻薬の使用を余儀なくされるといった悪循環をも生み出す。「気安く手を出してもよいか?」と問われたなら、首を縦に振るのはためらわれてしまう。

 マリファナの主要な生産地は、武装した麻薬カルテルが暗躍し、治安に深刻な問題を引き起こしているメキシコだ。だがここ最近では、アメリカのカリフォルニア州を中心に、ビジネスとして合法的に栽培を行う計画が相次いで実施されている。マリファナの健康被害の懸念は前述の通りだが、商業栽培が軌道に乗ることで、流通面に関しては犯罪性を排除した製品へ需要が移り変わる余地があるだろう。


■進展する中毒者の高齢化

 さて、ここまで世界に広がる麻薬について見てきたが、最後に興味深い研究をひとつ紹介しよう。これまで麻薬の中毒者といえば、鼻から粉末を吸い込む若者のイメージで通ってきたが、そうしたステレオタイプは次第に現実とかけ離れつつあるという。

 アメリカきっての大都市であるニューヨークで実施された研究の結果、米国における中毒者の半数は、50歳以上のベビーブーマー世代で占められている可能性が高いことが明らかとなったのだ。1996年には、治療を受けている患者集団の56.2%は40歳以下だったが、2012年には20.5%までその割合は低下している。麻薬の愛用者たちにも、高齢化の波が及んでいるのだ。

 この研究結果については、若い世代が麻薬に対する興味を失いつつあると解釈することもできるだろう(もっとも、50歳以上の患者数は同期間で激増しているため、単なる年齢層のシフトに過ぎないともいえ、予断を許す状況ではない)。

 今後も麻薬との戦いは続くが、麻薬を生み出さず、使わず、後の世代に連鎖させない未来が一刻も早く訪れることを心から願いたい。
(文=Forest)


参考:「Daily Mail」、「Wired」、ほか

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