「ただ、雨の降らないとこで寝たい」池袋からドヤ街・山谷まで歩き道に倒れていた男と出会って

■越境してきたおじさん

「ただ、雨の降らないとこで寝たい」池袋からドヤ街・山谷まで歩き道に倒れていた男と出会っての画像3「Another Side」(C)Sho Niiro

 私が「山谷へ案内しますから、とりあえず立ち上がってください」と言うと、おじさんは左足を怪我しているのか、びっこを引いている。

 池袋から足の痛みを我慢して、ある時はビルの隙間で、またある時は公園で、野宿をしながら歩いてきたのだとか。もう体力の限界なのか、ひとりでは立つのもやっと。フラフラしてどうしようもないので肩をかす。

 とりあえず店も閉まっているので、近くのコンビニで缶コーヒーとおにぎりを買い、手渡した。「いやぁ、甘ぁーですわ。やっぱりうまいですね。一週間ぶりだす」と、本当に美味しそうに口にした。

「ただ、雨の降らないとこで寝たい」池袋からドヤ街・山谷まで歩き道に倒れていた男と出会っての画像4「Another Side」(C)Sho Niiro

 しかしなんでまたこんな年始早々、池袋から山谷にやって来たのか聞くと、よくわからないが、役所の方でも、山谷なら安宿があるといった程度に思っていたようだ。

 生活保護の受給費として出る1日の宿泊費が台東区の場合は上限2,200円。他区よりも400円ほど高いため、1泊1,800円のドヤに泊まれば、お金が浮くというわけだ。

 このことを「越境」と呼ぶこともある。ただこのおじさんのように、「越境」をなかば強いられるケースというのは、区内にちょうどいい物件がなかったのか、年の瀬で役所の人も体よくあしらったのかわからないが、いずれにせよあまり聞かない話ではあった。

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