「ただ、雨の降らないとこで寝たい」池袋からドヤ街・山谷まで歩き道に倒れていた男と出会って

■いざ山谷へ

「ただ、雨の降らないとこで寝たい」池袋からドヤ街・山谷まで歩き道に倒れていた男と出会っての画像5「Another Side」(C)Sho Niiro

 とりあえずふたりで山谷を目指すことになったのだが、おじさんが足を痛めているため、通常歩いて10分ほどで着くところが1時間もかかってようやく山谷地域に着いた。

 歩きつつ、休みつつ、おじさんはあまり必要以上に何も話さない。肩をかし、まるで二人三脚の様にのっそりのっそり歩いて行った。山谷では、特例的に宿の住所を区に申請し、そこを一時期的な仮の住まいとするわけだが、色々とお役所的な書類は最低限必要なため、おじさんはポケットにビニールに入れて大切そうにしまっている。野宿のせいでぼろぼろになっているが、これがなくては話が始まらない。


■役所からのお達し「1泊500円以内の宿を見つけろ」

 山谷に着き、さっそく宿探しを始める。やはりどこか閉鎖的な街ゆえ、帳場さん(管理人さん)と顔見知りかどうかというのは大きい。何軒か回っても「ちょっとねえ。それに役所だってまだやってないでしょ」と、いざこざだけはゴメンという宿側の返事が続くのだ。

 そうしているうちに、やたらと料金のことを気にしているおじさんの様子が気になった。話を聞くととんでもない返事が帰ってきた。

役所の人から、一泊500円以内で見つけてこいって言われているんすよ

 石原慎太郎がそんな発言をして問題になったが、いくらドヤ街と呼ばれているからって、さすがに今の御時世そんな値段で泊まれるところはない。1畳部屋で1,000円の宿は知っているが、さすがに話が無茶苦茶だ。どうも役所の人は、山谷ならそれくらいでなんとかなる、と考えているようだ。いくらなんでも現実を知らなさすぎる。

 あまりに現実離れした話なので、おじさんに自分のiPhoneを渡して、役所の人に電話して掛け合うように言った。「これ電話なんですか?」と不思議そうに受け取るおじさんであったが、もともと押しの弱い性格なのか電話越しに「へえ、すいません。すいません」と繰り返している。

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