エンドモルフィン ― モルヒネと同じ効果で依存性・副作用がない夢の“新麻薬”

 モルヒネが痛みに対して驚くほど効果がある薬であることは、一般的にも広く知られていることであろう。薬品があふれている昨今の医療現場でも、モルヒネほど効果の高い鎮痛薬はみあたらないという。しかしその反面、モルヒネの依存性や副作用もよく知られている。

■体内に存在するエンドモルフィンから鎮痛剤を開発

 科学系情報サイト「The Science Explorer」によると、現在、モルヒネと同等の鎮痛効果を持ち、依存性や副作用がほとんどないという夢のような新薬の開発が進められているという。

 モルヒネは、植物のケシから抽出精製されるアルカロイドを基にする、いわゆるオピオイド系の薬品で、他のオピオイド系の薬物のヘロイン、コデイン、オキシコドンなどと同じく麻薬及び向精神薬取締法などによって規制されている依存性・中毒性の非常に高い薬物である。

 このオピオイド系の薬品は、簡単に言ってしまえば、痛みを感じる受容体で発生した刺激を遮断し、痛みを感じさせなくするという仕組みで、強烈な痛みなどに対しても極めて高い効果があるとされている。しかし、このオピオイド系の薬品は、医師による観察下において使用されていても、依存症や激しい副作用のコントロールが難しいものと言われており、非情に取り扱いがやっかいなのである。

 しかし、今回、開発が進められている新薬は、オピオイド系ではなく、もともと体内に存在する神経化学物質であるエンドモルフィン(Endomorphin)という物質から変異体を設計しようという試みである。エンドルモフィンは脳内で機能する神経伝達物質のひとつである。内在性オピオイドであり、モルヒネ同様の作用を示す。特に、脳内の「報酬系」に多く分布する。内在性鎮痛系にかかわり、また多幸感をもたらすと考えられている。そのため脳内麻薬と呼ばれることもある。

 マラソンなどで長時間走り続けると気分が高揚してくる作用「ランナーズハイ」は、エンドルフィンの分泌によるものとの説がある。 食欲、睡眠欲、生存欲、本能などが満足すると分泌される。

 これは、モルヒネと同様に痛みの受容体に作用するものであるが、ペプチド系と呼ばれ、もともと体内に存在するものに由来し、副作用や中毒性がないとされる。

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