水木しげる先生お別れの会参列記 一反木綿の握り寿司や目玉おやじのマカロン…「本当にありがとうございました」

【妖怪文化の担い手たち】

水木しげる先生お別れの会参列記 一反木綿の握り寿司や目玉おやじのマカロン…「本当にありがとうございました」の画像6※イメージ画像:『わたしの日々【Kindle版】』(小学館)

 会場で、ようやく京極夏彦さんと荒俣宏先生にお会いすることができた。荒俣先生にご挨拶というのは、私にとっては緊張するのもいいところであるが、山口氏の紹介で名刺までお渡しすることができた。

 荒俣先生にとっても、水木しげる先生が亡くなられたことは大きなショクであり、喪失感もまたただならぬものがあったのだろう。


「これからの日本の妖怪文化は山口敏太郎事務所にまかせます」


 まるで山口氏の肩を叩かんばかりに強く、繰り返しておっしゃっていたのが印象的だった。京極さんはだいぶお疲れのようにお見受けしたが、まあ、これだけの式典を取り仕切られたのだから当然であろう。それでも山口敏太郎氏には水木先生亡き後、ますます頑張って活躍してくださいとエールを送っていた。

 三三五五、参会者が会場を去っていき、我々もまた青山斎場をあとにした。正門をくぐると、このあと水木しげる先生に最後のお別れにおとずれた。一般のファンの方々が東参道に長い列を作りはじめていた。

【棺を覆いて 事定まる】という言葉がある。

 男は棺桶のふたを閉じて、初めてその人の価値が決まるといった意味だが、漫画家、水木しげるの名は、今高く深く定まった。


「ああ、水木先生亡くなられちゃったんだなぁ……」


 山口敏太郎氏がその日何度目かの同じセリフをぼやいた。その両肩にはずっしりと、水木先生から継承された妖怪文化が乗っているようだった。

 青山斎場の上には冬晴れの青空がひろがっていた。苦労と苦難の多かったという先生の人生であったが、その締めくくりにはこの青空が一番似合っていたと私は思う。

 水木しげる先生。

 本当にありがとうございました。

 また、どこぞでお会いします。

 合掌。

(文=光益公映/作家・ライター)

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