水木しげる先生お別れの会参列記 一反木綿の握り寿司や目玉おやじのマカロン…「本当にありがとうございました」

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【晴天の青山斎場で】

 さる1月31日、去年、亡くなられた漫画家・水木しげる先生のお別れの会が港区の東京青山斎場で執り行われた。

 普通ならばここで、“しめやかに執り行われた”と書くべきところなのだが、実際にはしめやかというよりはなごやかに、とでもいうべき会場の雰囲気であった。

 理由としては水木先生が93歳のご高齢での大往生であったことと、なによりもその大らかな人柄によるところが大きかったのかもしれない。

 今回私は『さくや妖怪伝』という映画の原作・脚本・小説で妖怪をあつかった作品があることで、作家で超常現象などの研究家としても知られる山口敏太郎氏からのお誘いをうけ、参列をさせていただいた。

 会場に入ると正面には、ゲゲゲの鬼太郎と悪魔くんのイラストが水木先生の遺影をかこんだ祭壇がしつらえられていた。一際、参列者の目を引いたのは、遺影の前に供せられていた天皇陛下からの祭粢料(さいしりょう)の目録であった。

 祭粢料などと言われても一般には極めて馴染のない言葉だが、国家に功績のあった人に対して天皇陛下から下される香典のようなもののことである。

 そういえば水木先生は文化功労者で、旭日小綬章も受けられていたっけなあ、などということを思い出しもしたが、そんな叙勲歴など関係ないほど、水木先生は、偉大な存在だったと私は思う。

 式の司会進行はこの会の世話役である、直木賞作家の京極夏彦さんであった。落ち着きがあり、なおかつユーモアの散りばめられた素晴らしいスピーチであった。

 なかでも参会者の胸を打ったのは、「水木しげる先生の描かれた世界においては此岸(しがん)と彼岸(ひがん)とは地つづきです」という言葉であった。

 ああっ! そうなのだよ。

 鬼太郎たちの住むゲゲゲの森は人間の世界とは隔絶されていない、そこの横町をぬけたらフッといけそうな不思議な距離にあるのだ。

 多くの人々が水木先生の作品にひかれる魅力もそこにあることを思い至らせてくれる話だった。

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