マリリン・モンローとの一夜の記憶も移植可能!? 人間の記憶を自由に操作することが可能になる(学者)
■アルツハイマー治療へも
そして受賞した3人のもう1人、リチャード・モリス教授(67歳)は、記憶操作によるアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の治療への道を探っている。アルツハイマー病は時を経るに従い進行する病気で、初期の段階においては記憶障害が見られる。モリス博士はこのとき、記憶や学習を司る海馬のシナプス結合の機能が症状に冒されているのではないかと考えているのだ。そして特にLTP(長期増強)のメカニズムがうまく働かなくなることで、新しい記憶を形成できなくなっていると説明している。
「言うは易く行うは難しではありますが、アルツハイマー初期の治療に焦点を絞ることで、進行を食い止める有効な新薬を開発できる道が開けてきます」(リチャード・モリス教授)
今年の「Brain Prize」に合同での受賞となった3人の教授だが、研究の方向性はこのようにそれぞれ異なっている。この3人のパイオニアに触発されて、神経科学における記憶の分野において、若い研究者も着実に育っているということだ。
また同じタイミングで米公共テレビ「PBS」の人気ドキュメンタリー番組『NOVA』でも記憶の操作がどこまで可能なのかを探った科学特番「Memory Hackers」を先頃放送して今注目を集めている。しかしながら人間の記憶が自由に追加されたり削除されたりする日がやってくるとすれば、自己同一性を柱とする現在の“人間観”を大きく揺るがすものにもなる。神経科学の驚くべき進歩に胸が躍る思いがすると共に、今後の研究の進捗がどのような展開を見せるのか気になるところだ。
(文=仲田しんじ)
参考:「Telegraph」、「Daily Mail」ほか
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2024.10.02 20:00心霊マリリン・モンローとの一夜の記憶も移植可能!? 人間の記憶を自由に操作することが可能になる(学者)のページです。記憶、脳、海馬、仲田しんじ、シナプス、神経科学などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで