宇宙人襲撃に備えて地球を「迷彩マント」でカモフラージュする構想が浮上!

 もし人類と同じような知性を備えた生命体が宇宙のどこかに存在するのであれば、彼らもまた総力をあげてほかの生命体の存在と居住可能な惑星を探しているに違いない。はたして我々が彼らを発見するのが先か、それとも逆にこちらが先に発見されてしまうのか? この競争に勝つために、レーザーを使って地球全体に“迷彩マント”をかぶせて見えなくするという画期的な提案が先日発表されたのだ。


■大出力レーザーを照射して地球の存在を隠蔽する

 もしエイリアンが我々を訪問したなら、ネイティブアメリカンにとって望ましいことではなかった“コロンブスのアメリカ大陸発見”と同じ結果を招く――。この警告メッセージを昨年に発したのは“車椅子の物理学者”こと、スティーヴン・ホーキング博士だ。

 したがってこの危険を回避するために、ホーキング博士は「地球外生命体とコンタクトをとるべきではない」と主張している。つまり優先すべきはこちらが先に地球外知的生命体を見つけることであって、こちらからむやみに電波や光などでメッセージを発してはならないということだ。天才理論物理学者のホーキング博士の言葉だけに、確かに重く受け止めねばならないのかもしれない。

 では具体的にどのような手段を講じればよいのか? 先に相手に発見されてしまわないためには、地球を“迷彩マント”でおおってしまえばよいと主張する科学者が現れている。

 米・コロンビア大学のデイビッド・キッピング教授と教え子の大学院生であるアレックス・ティーチー氏の2人が3月31日に王立天文学会の月報で発表した研究は、レーザーを使って地球の存在を覆い隠すという斬新なアイディアだったのだ。はたしてそんなことが可能なのか?

 それにはまず、我々の側が現在どうやって“居住可能”な惑星の探査を行っているかを説明する必要があるだろう。太陽系では太陽にあたる恒星が観測の基本的なポイントになるわけだが、NASAの宇宙望遠鏡「ケプラー」などを駆使して恒星を観測した際に、恒星の前を横切る小さな“染み”が発見できれば、それは惑星であると考えられる。この観測方法はトランジット法と呼ばれ、実際にこの方法で現代の天文学者たちは他の恒星系にある惑星を発見しているのだ。

宇宙人襲撃に備えて地球を「迷彩マント」でカモフラージュする構想が浮上!の画像1「トランジット法」の解説図 画像は「Cool Worlds」より

 そしておそらく、地球外知的生命体も同じように太陽系を発見した後に、この方法で地球の存在を特定する可能性が高いと想定できる。ならば地球を太陽の“染み”にならないように、いわば“迷彩マント”で覆ってしまえばいいと考えたのが、キッピング教授らの研究である。

 ではこの“迷彩マント”とはどんなものなのか? この“迷彩マント”は大出力のレーザーを空に向けて照射することで発生するということだ。例えば南米・チリにある超大型望遠鏡(Very Large Telescope、VLT)などの施設から30メガワットのレーザーを毎年10時間連続、空に向けて照射することで、地球の周囲の光の状態を歪めることができ、太陽の“染み”にならずに地球外知的生命体による発見を免れるということである。広い意味での“光学迷彩”技術であるとも言える。つまり強い光を放つ太陽の前を横切りながらも、車に例えればヘッドライトを“ハイビーム”で点灯させていれば少なくとも“染み”にはならないということのようだ。

 キッピング教授らは、合計で250メガワットのレーザーが照射できれば完全に地球全体を“覆い隠す”ことが可能であるとも主張している。

 しかしながら、やはり消費電力は莫大な量に及び、30メガワットのレーザーを10時間連続照射するのに、アメリカの平均的な世帯6500件が1年で消費する電力が必要とされるということだ。それでも、現在でも22メガワットのレーザーが運用されていることから、決して奇想天外な話ではないようだ。はたしてこの案が採用される日がやって来るのだろうか……。

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