■誰のための写真なのか?
『沖縄のことを教えてください』の独特さは、視点だけでなく、写真そのもののフラットさにもある。ジャーナリズムに偏ることもなくアートやドキュメンタリーのカテゴリに括ることもできないその立ち位置は、初沢自身の人間観、世界観にも繋がっているように思える。
「これまでもそうでしたが、写真家としての自分は様々な対象に対して興味を抱きます。写真には必ず撮り手の人間観、世界観が写る。人間とは何か? 世界とは何か? を探りたいのであれば、自分の住んでいる街のなかで撮影をすることのほうが本来自然なことです。『自身の内なる矛盾と世界の矛盾が出会う場所が写真である』としばしば僕は語りますが、では、なぜそれを沖縄でやらなければならないのかは必ず問われるし、明確に答えられなければならない。『写真を観て感じてください』ではダメなんです。今そこにある沖縄をフラットにしか見られない感受性が僕には確かにあって、それによって生み出される写真がどのような意味があるのか? そして、誰のための写真なのか? このあたりを曖昧にする写真家が多いのも事実です。しかし、そのようなエゴイズムは結果として被写体を深く傷付ける可能性があることを写真家は知らなければなりません」(初沢)