■ナイチャーにはせめてこれくらいのことは解ってほしい
自分に不信感を抱く人々と対話を続けることはただでさえ辛いこと。それが、差別をする側とされる側の関係なら、なおさら簡単じゃない。しかし、初沢は沖縄を撮ることに近道はないと言う。『沖縄のことを教えてください』という写真集のタイトルは、沖縄の人々との絶え間ない対話のなかで初沢が見出した、本土の人間として沖縄を考えるための1つの答え、姿勢を表しているような気がする。
「でもね、『このタイトルだって問題だぞ』と言われましたよ。問題は抑圧する側にあるのに、抑圧される側に教えてもらうというのは、厳密に言えば筋が通らない。『まずは沖縄を解っていない自分のことを考えろ』ということ。教えてもらう前に自分のことを知るのが先だろうということです」(初沢)
地道な積み重ねの甲斐があって、『沖縄のことを教えてください』は、沖縄でもかなり受け入れられているようだ。
「せめてナイチャーにはこれくらいのことは解ってほしい、という入口には立てたかなとは思います。沖縄について発言をする本土の識者の多くは、左右を問わず本土目線でしか語ってこなかった。日米安保賛成・反対ですら『安保の現場』である沖縄を利用する形での議論をしてきたわけです。沖縄は本当に日本の一部なのか? と怒りをあらわにする沖縄人は確実に増えている。日本全体の安全保障環境が大きく変わろうとしている今、彼らの危機感はこれまで以上に切実です。そろそろ我々は沖縄の声にしかるべき応答をしなければならない時期にきている。沖縄の米軍基地の本土への引き取りも含め、日本人の責任として議論を深めていかなければいけません」(初沢)