■イメージとしての沖縄ではなく
『沖縄のことを教えてください』はこれらのどれとも趣が異なる。渡嘉敷島から見た本島の夜景に始まり、海岸で抱き合うカップル。琉装をまとい強い眼差しをレンズに向ける少女たち。基地内のボーリング場で時間を潰す若い米兵。辺野古のゲート前で工事車両の侵入を拒む住民たちもいれば、埋め立てを支持するデモに参加する者たちもいる。
スターバックスの店内でリクルートスーツを着た女学生が見せる笑顔も、国際通りでたむろす若い海上自衛隊員も、煤けたビルを背に険しい顔でカメラを指差す男も、どれも等しく初沢が邂逅した沖縄の光景。そこに生きる人々の日常を切り取った良質なスナップ写真だ。美しい自然も独特な風俗も、日本人も外国人も、政治的主張の対立するグループさえもが同じ距離感で撮影され、1冊に収まっている。
「基地、自然の美しさ、神事というようにテーマを絞ることなく、それらを相対化して描くことは、ある意味で当たり前の視点でありながら、誰もやっていなかったんです。だから、写真を見た本土の人たちが、それぞれの内にに内面化された『イメージとしての沖縄』を揺さぶられることになる」(初沢)
『沖縄のことを教えてください』は、言うなれば、特別ではない沖縄が写し出された、”特別な写真集” なのだ。