世界最強の毒草ドクウツギを栽培し、味見した結果がヤバくて意外すぎる!【ググっても出ない毒薬の手帳】

■実際にドクウツギを栽培した結果がヤバい!

 筆者も、かつて山歩きでようやくドクウツギを発見し、なんとか掘り起こして家に持ち帰りました。ですが、枝が少し折れただけでもすぐに萎れ、その後復活すること無く散り、見るも無惨に枯れました。再度、採取を……と思ったら、元の株を採取する際に少し枝葉が折れただけで、こちらも無残に縮み、びっくりするくらいに弱っていたので採取を断念した覚えがあります。

 その後、奇跡的に採取できた株が復活してきたので、現在も栽培を続けていますが、水枯れに弱いにもかかわらず、水が多いと根腐れを起こし、枝葉は折れやすく、折れた枝は大半が枯れ落ちるデリケートさ。肝心の毒も、昆虫には無毒らしく、ヨトウムシをはじめ、さまざまな虫の餌食になり、カメムシまで大量にたかる始末。そして、カメムシに刺された枝はやはり枯れます。

 しかも、花芽は2年目以降の枝にしかできないにもかかわらず、冬には夏場育った枝の大半が根元まで枯れて、花芽をつけることができる枝は極めて少ない……。おまけに、結実した枝は弱り、大半がそのまま腐り落ちるという、もはや生きる気力を感じ取る方が難しいレベルのワガママ植物です。現在もなんとか維持していますが、人の命を各地域から狙う極悪な毒草というイメージからは、ほど遠いというのが正直な感想と言えます。


■毒草を少し味見してみた

 しかし、その危険な果実を味見してみると、ほんのりと青臭い中に甘みがあり、何も知らない子どもだとうっかり手を出してしまいそうな危険な風味があります。

 そもそも果実というのは、動物に実を食べてもらって、(糞として)実を遠くまで運んでもらい、新たな場所に植えつけるものですよね? これで植物と動物の共存関係が築かれるわけですが、その実に毒を入れるというのは、実に意味不明な進化といえます。

 たとえば、トウガラシは、本来ほ乳類には食べてもらいたくないために、カプサイシンという辛み物質を実の中に忍ばせる進化をしました。鳥類は辛み受容体を持たないため、鳥類にのみ食べられ、効率的に分布するという選択性を獲得した植物です。

 ……まぁその成分のおかげで、インド人を始め、今や世界中で栽培されているわけですが(笑)。

 ともあれ、おそらくドクウツギもかつては、毒をモノともしない相棒がいて、繁栄をした時代があったのでしょう。現在はそのパートナーも失い、ひたすら誰も食べない(実際に鳥も食べない)“誰得”の毒入り果実を実らせては腐らせる不毛な結実をしています

 そのおかげで種子の発芽条件も厳しく、種子からの繁殖まで微妙……という、まさに進化の袋小路といった有様です。哀愁漂う感じになってしまいましたが、その毒性は本物。後編はそのヤバすぎる毒性について紹介しましょう。
(文=くられ/シリーズまとめ読みはコチラ

後編は7月1日18時配信予定

 

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■くられ
 添加物を駆使した食欲の失せるカラフルな料理やら、露悪的で馬鹿げた実験を紹介していく、「アリエナイ理科ノ教科書」の著者、サイエンスライター。公演やテレビ出演なども多数。無料のメールマガジンも配信している。ひっそり大学で先生をしてたりもする。WEBや雑誌での薬と毒関連の連載をまとめた新刊『悪魔が教える 願いが叶う毒と薬』(三才ブックス)が好評発売中。
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・青酸カリ「前編」「後編
・リシン「前編」「後編
・クロロホルム「前編」「後編
・一酸化炭素「前編」「後編
・覚せい剤「前編」「中編」「後編
・トリカブト「前編」「後編
・タリウム「前編」「後編
・ドクウツギ「前編」

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