――身動きもままならないほど窮屈で暗い迷路の先はどん詰まり、ですね。
木原 正直「こんなの世の中に出していいんですか?」っていうくらいダウナーっていうかバッドトリップ。言って見れば僕の「私写真」でもあるわけで、若い時の目の前の景色がこれって悪夢だよなっていう感覚があるんですよ。
――写真家であるという自覚も自負もなかった時期ならなおさらキツいですね。
木原 そう。だから、ひも解くと絶対ポップなものじゃない。汚れた便器から危ない世界に沈んでいくリアルなユアン・マクレガーですよ。でも、自分でも面白いなって飽きずにジワジワと観ちゃうんですけれどね。「中毒」っていう言葉で表すのはわざとらしいけれど、本当にそういう感じがするんです。
――木原さんにとってのダクト撮影は、『サタデーナイトフィーバー』のジョン・トラボルタにとっての週末のディスコみたいなものなのかもしれないですね。先も見えず冴えない退屈な日常なかの束の間の輝きみたいな。
木原 「写ルンです」のストロボがその象徴かもしれないですね。フラッシュを焚くと一瞬目の前がホワイトアウトする。「写ルンです」って、キーンっていうストロボのチャージ音がするんですよ。体感として「写ルンです」は妙な感覚がありますよね。
――フラッシュが光った時、「このままどうにでもなっちまえっ!」っていう、高揚感が湧き上がってくる感覚はわかる気がします。
木原 あります、あります。そんな感じ。