――胃薬?
木原 借金だけじゃなくて、生活になんの将来性もないし、付き合ってた女の子も愛想尽かして出て行ったり。誰でもそういう割り切れない生活をしている時期ってあるじゃないですか。そういう時でも写真を撮ればマイナスのテンションがゼロになるみたいな。だから、写真のなかには結構死んだ目で撮ったものが何枚もあるんですよ。
――それは意外です。話を伺って写真の見え方が変わりました。
木原 きれいな写真として観てくれる人もいるし自分にもそういう感覚はあります。けど、はっきり言って僕自身にとってはかなりのバッドトリップなんですよ。『トレインスポッティング』って観たことあります?
――あります。ユアン・マクレガー扮するスコットランドのジャンキーの若者 たちのグダグダな日常を描いた映画ですよね。ちょうど続編の制作が始まっているみたいですよ。
木原 あのなかで登場人物が汚い便器のなかに潜っていくシーンがあるんですけれど、まさにあんな感じ。潜って行った先の目の前がこんな世界ですからね。クローズアップじゃなくて空間全体でこれだから。