人工衛星搭載カメラの監視網が地球上を覆い、ネットに繋いでGoogle Earthを起ち上げれば、部屋を出ずともあらゆる場所の様子を見ることができる現代。お金と時間があればたいていの場所に行くことだって可能だ。「もはや地球上からフロンティアは消滅した」と高名な研究者が言ったのはいつのことだっただろう。
ところが、未開の世界は意外にもすぐそばにあることを、ごく一部の人たちだけが知っている。東京と横浜を中心に、ビルのダクト(通風管)に20年に渡って潜り、清掃の仕事の傍らで写真を撮り続けてきた写真家・木原悠介はその1人だ。
大半のビル内部には換気用、空調用のダクトが人間の血管のように縦横無尽に走っている。それなのに、内部を知る人はほとんどいない。さながら都市のフロンティア。“ご近所の秘境” は僕らの半径10メートル以内にあった。
現在、東京・中目黒のギャラリー、POETIC SCAPEで写真展『DUST FOCUS』を開催中。同時刊行の写真集もジワジワと評判を呼んでいる木原さんにお話を伺った。木原さんはなぜダクトの撮影を続けてきたのか? ダクトの奥にどんな光景を見てきたのだろうか?